モーツァルトはメトロノームを知らない

 さて、ここから先が教室での焦点です。こうやって物理的に振り子を作って、腕の長さをコントロールしながら「たん たん たーぬきの」と私は歌を歌うわけです。

 たぬきは金時計をもっていて、別段ほかのものは揺れませんので、教育的には問題がないものとご理解ください。子供たちは笑いますが・・・。

 で、この振り子の与えるテンポで、モーツァルトを演奏するわけです。

東大生、藝大生が協力しあって中学・高校生向けのカリキュラムを考える。写真は、歩行速度から算出された腕長の振り子を見ながらモーツァルト アイネ・クライネ・ナハトムジークの「アンダンテ」を「歩けるアンダンテ」で演奏する藝大生たち。

 現代のメトロノームに印刷されている「アンダンテ」などの表示は19世紀末から20世紀初頭にかけて確定したと思われます。

 そもそもこの道具が音楽の世界に定着したのは19世紀に入ってからで、ハイドンも、モーツァルトも、バッハもヘンデルもヴィヴァルディも、こんなへんてこりんな機械とは縁もゆかりもありません。

 主としてベートーヴェン以降の作曲家がメトロノーム表示を譜面に記しています。

 そんなイノベーション以前の時代、ヴィヴァルディやモーツァルトたちが、イタリア語で「歩くように」と書いているのが、楽譜に記された「アンダンテ」にほかならない。

 モーツァルトだって散歩するときは心拍数は102とか104程度で、76なんて徐脈であるわけがない。