「さらにNDA(秘密保持契約)を結んで栽培ノウハウを教えてもらい、うまくいかなかった事例も聞いて参考データにする。ノウハウをどれだけオープンにしてもらえるかが、成功の鍵です」

 こうして抽出した栽培好適地の条件をもとに、衛星データを中心とするビッグデータを駆使し、類似した条件の場所を見つけ出していく。その過程では機械学習も用いる。

 土地評価に使う主な衛星データは温度、降水量、3D地形、台風進路などで、目的に応じて日本やNASA、ESA(欧州宇宙機関)など世界の衛星データを組み合わせる。気象庁のアメダスや農林水産省が提供する土壌情報などの地上データも活用する。

 衛星データを使うメリットは何か。

「ある土地を知ろうと思ったら、気温計や雨量計のデータが必要です。気象庁のアメダスシステムは全国に設置した雨量計や温度計・風光風速計の観測データが使われていますが、計測器がない場所もある。外国でも同様です。一方、衛星データは地球全体にわたって過去数年分がアーカイブされている。その衛星データを『天地人』の技術で解析すれば、地上の計測器がない場所でも、過去のデータが得られます。つまり宇宙から『気候風土』という点で土地の価値が分析できる」

 従来の土地選定の方法はデータが十分に足りてない状況下で、「今までやってきたから」「隣町で成功したから」など従来継続型に近い方法がとられていた。必ずしも根拠に基づいた土地選定がなされてきたとは言えない。

 天地人コンパスを使えば、ゼスプリにとっては土地勘のない日本のどこがニュージーランドの気候風土と似ているかについて、科学的に根拠ある情報が得られる。地方自治体にとっても、キウイという新たな名産品を生み出し、地域活力の活性化や休耕地・耕作放棄地の活用につながる。

 天(衛星データ)・地(地上データ)・人(企業や人に宿るノウハウ)を組み合わせた「データ解析技術+評価のしくみ」=天地人コンパスは、天地人の独自技術であり、特許出願中だ。

天地人コンパスのデモ画面。「天」からのデータである衛星による地表面温度や降水量などの情報に、「地」からの観測情報を加え、「人」の栽培ノウハウから得られる評価軸を使って分析する。(画像提供:天地人)