世界は今、小型衛星ブームだ。何百機・何千機もの小型衛星を打ち上げ、高速インターネット網を構築したい、地球を頻繁に観測して農業や漁業、都市計画に活用したいなど多種多様な目的のために、今後10年間で数千機の小型衛星が打ち上げを待つと言われる。
だが、ちょっと待って! 衛星を大量に作っても、宇宙に運ばなければ仕事はできない。まずは「衛星の運び屋=ロケット」が必要だ。ところが小型衛星打ち上げ用のロケットが、世界で全く足りていないのである。
日本の小型ロケットのスタートアップといえば、北海道・大樹町で挑戦中のインターステラテクノロジズが知られる。そして2018年7月、新しいロケット企業、スペースワン(東京都港区)が登場。60年以上蓄積してきた日本の固体ロケットの技術を活用し、専用発射場を和歌山県串本町に建設中。2021年度の初打ち上げを目指す。太田信一郎スペースワン代表取締役社長に聞いた。
好きなときに、好きな場所へ
まず、スペースワンとはどんな会社なのか。太田社長は「専用の小型ロケットを使って、専用の発射場で、小型衛星の輸送について利便性の高いサービスを提供する会社です」とそのコンセプトを説明する。
太田社長によると、スペースワンは2018年7月1日、4社が出資して設立された。その4社とはキヤノン電子、IHIエアロスペース、清水建設、日本政策投資銀行(DBJ)。
キヤノン電子は、JAXAが2018年2月に打ち上げ成功した小型ロケットSS-520 5号機に参画。アビオニクス(電子機器)などを担当した。また、2017年にインドのロケットで小型衛星を打ち上げるなど衛星事業も展開している。
そしてIHIエアロスペースといえば、前身を含めれば1955年に日本で初めて発射されたペンシルロケット以来60年以上、日本の固体ロケットを開発してきた宇宙企業だ。固体ロケットの知見を同社ほど持っている企業は、日本で他にないといえる。
清水建設は、1980年代から宇宙ホテルや月面基地などのさまざまな宇宙構想を研究してきたことで知られるし、DBJは宇宙ビジネス向けにもリスクマネー供給を行う政府系金融機関だ。