「4社の異業種連携企業であり、それぞれの経験やノウハウを結集する、日本では珍しい会社ではないかと思います」

 なぜこれら大企業が、このタイミングで手を結んだのか。

「2018年に宇宙活動法が施行される前から、宇宙を舞台にさまざまな事業をしていこうと4社で検討を進めていました。2017年8月には企画会社(新世代小型ロケット開発企画)を設立し、世界の宇宙動向について調査を進め、海外に出かけ潜在的な顧客の意向をヒアリングもしました」

 約1年にわたるリサーチの結果、小型衛星は今後、爆発的に増えることが分かったが、その一方で、打ち上げロケットについては課題があることが見えてきた。

 現状は、大型主衛星の隙間に小型衛星を相乗りさせるか、小型衛星を数十機まとめて打ち上げる方式が主流。しかしこれらの方式では、他の衛星の都合に合わせて打ち上げ時期が決まったり、目的とする軌道にダイレクトに到達できなかったりする。つまり小型衛星の衛星事業者が、衛星を上げたいときに、届けたい場所(=軌道)へ打ち上げることがなかなかできないという不自由さがあった。

「そこで、『オンタイム(好きな時に)・オンオービット(好きな軌道=場所へ)』を実現しようというわけです」

 その目的のために、小型衛星打上げ専用ロケットと専用の発射場を持ち、小型衛星の宇宙輸送サービスを行う企業スペースワンを発足させたのだという。IHIエアロスペースやキヤノン電子でロケット開発に関わり、知見を持ったエンジニアも働いている。

即応性が売り、組み立てから7日で発射

 では、スペースワンはどんなロケットを開発しているのか。全長約18メートル、質量約23トン。3段の固体燃料モーターと、最終段には小型の液体推進システム(PBS)を搭載し、衛星を正確に軌道に投入するロケットだ。PBSは、JAXAの固体ロケット・イプシロンロケット3号機(IHIエアロスペースが開発・製造)で実績があるシステム。このロケットで高度500kmの太陽同期軌道に150kgの衛星を、地球低軌道に250kgの衛星を打ち上げることができる。

 ロケットの売りは?

「即応性です。固体燃料ロケットは打ち上げ直前に燃料を注入する必要がなく、(燃料が充填された状態で)保管しておくことができます。発射場でロケットを組み立ててから打ち上げまで、天候が順調なら7日間で打ち上げられます」