液体燃料を使ったロケットは、発射台に立てた後に燃料の注入が始まる。一方、固体ロケットは保管庫から出してすぐに発射可能で取り扱いが楽だ。ロケット組み立てから発射まで、通常は数カ月単位でかかる時間が7日間というのは驚異的な速さ。
さらに衛星の打ち上げ契約を交わしてから打ち上げまで、通常は約2年かかるところ、12カ月以内を目標に掲げる。この即応性を武器に、2020年代半ばには年間20基の打ち上げを目指すという。
ただし固体ロケットといえば、液体ロケットと比べて、衛星が受ける振動条件が厳しいのが気になるところ。イプシロンロケットでは制振機構によって振動条件を緩和し、衛星に優しいロケットを実現しているが、それらの技術を取り入れることも検討中とのこと。
太田社長が強調するのは信頼性の高さだ。
「固体ロケットは元々、構造がシンプルで部品点数も少ないため、故障がしにくく、また低コストで製造できる。さらに当社は長年にわたり国で蓄積されてきた固体ロケットの技術を活用させていただく。JAXAの小型ロケットSS-520 5号機の開発・打ち上げには(出資会社である)キヤノン電子とIHIエアロスペースが共同研究開発を実施しました。SS-520 5号機は民生技術を活用した事業でしたが、その成果を最大限活用したい」
一方、世界の小型ロケット市場では米国のロケットラボ社を筆頭に約100社がひしめく。2019年7月には中国のスタートアップ星际荣耀(i-space)が双曲線1号ロケットを打ち上げ、重さ約3kgのアマチュア無線衛星を高度300kmの軌道投入に成功したと発表した。信頼性の高さはもちろん、熾烈なコスト競争になっていくだろう。
打ち上げ費用については、先行するロケットラボの場合、150kgの衛星で約6~7億円とみられている。スペースワン社の打ち上げ費用は未公表とのことだが、2020年代半ばに年間20機のロケットを打ち上げる量産効果によって、また部品に民生品を使うことによって低コスト化を図るとのこと。信頼性と低コスト化の両立によって、国際競争力のあるロケットを実現するという。
どんな衛星を打ち上げるのか?
「通信や地球観測衛星がメインになると思うが、最近は新しい宇宙利用がでてきているので、顧客の要望に柔軟に対応していきたい。もちろん事業者だけではなく、JAXAや国の衛星も打ち上げたい。米国など世界では既に民間ロケットが国や宇宙機関の衛星を打ち上げています」