和歌山県に発射場を建設

「世界最短、世界最高頻度」の小型衛星輸送サービスを目標に掲げるスペースワン。目指すのは、「使い勝手のいい(小型衛星の)運送業」の実現だ。衛星を打ち上げたい時に打ち上げるためには、専用の発射場が必要になる。

「企画会社を設立後の2017年9月、全国の都道府県に発射場の条件についてお知らせし、情報提供をお願いしました。南方に陸地や島がないこと、地元に歓迎されること、陸地での輸送が容易なこと、発射場の周囲のある広さに人が住んでいないことなどです。すぐに和歌山県と串本町、那智勝浦町の3自治体から手を挙げていただきました。その後、現地調査をした結果、発射場の条件に合致しているということで、今年の3月に射場建設予定地として決定させて頂いたのです」

 和歌山県串本町田原は本州最南端に位置し、南方は開け、陸路の輸送も容易だ。糸川英夫博士が日本初の人工衛星打ち上げ前に、全国に発射場を探した際、候補地として和歌山県を訪れたとも伝えられる。陸路の輸送も容易。年間20基、つまり1カ月に1~2機衛星を打ち上げとなると、地元関係者との調整が大変ではないだろうかと思うが、「射場建設工事の着工にあたっては、地元の関係者の方々にご了解を頂いた。引き続き地元住民の方々を中心とした関係の皆様にしっかりご理解を頂くためにご説明を重ねたい。今後、串本の射場に根を下ろし、宇宙輸送サービスを継続的に提供したい」とのこと。

最短、最高頻度の打ち上げサービスを目指す

 新しい発射場から飛び立つ新しいロケット。ロケットも新発射場もお披露目が楽しみなところだが、現在はロケットの基本設計を実施中。2020年頭には詳細設計を固め試験を実施、製造に取りかかる。2021年には射場、ロケットが完成し、2021年度中に打ち上げる計画だ。

 現時点での課題は? 「民間独自の衛星打上げロケット射場とロケットによる宇宙輸送サービスの実現のため、日々あらゆることがチャレンジ」と太田社長は言う。

「ロケット開発、射場建設、営業。関係府省のご意見を伺い、ロケットも射場も宇宙活動法のもと許認可を得ないといけないのです」

 射場の建設は既に始まっている。2021年度の初打ち上げに照準を合わせ、ロケットと射場のすべての作業が急ピッチで進められているようだ。

 ロケット打ち上げは成否が分かりやすい。数年前、日本の国産ロケット開発で産みの苦しみを味わったロケット技術者を取材した際、「ロケットは30分一本勝負」といった言葉が強く印象に残っている。打ち上げ後、ロケットが衛星を軌道に投入するまで約30分。成功か失敗かが、万人の目の前に晒される。失敗すれば、搭載した衛星を含め莫大な損失となるリスクはあるが、成功したときの喜びは何物にも代えがたく、病みつきになると。