意外な要素、「重さ」が食べ物の味を左右していた

食器の重さも影響する人間の感覚の不思議

2019.12.13(Fri)漆原 次郎

“おもみ調味料”でチョコの量が増えた感覚に

 日本でも、食器に仕掛けをして、知覚される「重さ」を制御することにより、いつもと違った味わいを制御するといった試みがされている。

 2014年、慶應義塾大学の研究室から「グラビトミン酸」とよぶ“おもみ調味料”のシステムが生まれた*3。このシステムは、バーチャルな重さを提示するタイミングを決める調味料入れと、重心を制御するしくみを把持部に実装したフォークという2つのインターフェイスから構成される。把持部の内部にある重りが移動することで、手に持ったときに知覚する重みを変化させることができる。

 被験者は、バーチャルな重さが加わっていない状態と、加わっている状態でフォークを使い、チョコシューに詰まっているチョコレート量の知覚を評価した。すると、バーチャルな重さがあると、被験者はチョコシューの中のチョコの量が増えたように知覚するという結果が得られたという。ただし、バーチャルな重さが最大のときは、被験者はチョコの量が多いとは感じられなかったともいう。研究者たちは、被験者が重さの提示に気づいてしまったことが原因と考察している。

「食べる」という作業では、食べものを見て、においを嗅いで、味を感じて、舌触りを覚えてといったように、いくつもの種類の感覚が関わる。そして、これらの感覚は互いに影響を及ぼしあっているという。これは「クロスモダリティ現象」とよばれている。

 刺激を複数の感覚器が同時に受けるとき、どちらかの感覚が優先され、その優先されたほうの感覚が、脳に貯められている記憶などと結びついて、実際とは異なる感じ方をもたらす場合があるのだ。

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