6600万年前、白亜紀末の恐竜絶滅は、その理由が長年議論されてきたが、現在ではカリブ海におちた直径10kmほどの隕石(小惑星)が要因であったことが定説として受け入れられている。この共通認識を前提にして近年、この隕石衝突前後の生態系はどうなっていたのか、何が起きていたのか、その詳細について深掘りして研究されるようになってきた。
当時暮らしていた75%以上の生物種を絶滅に至らしめた隕石衝突。その前後は、時代区分としても白亜紀(中生代)と古第三紀(新生代)に分かれるが、巨大隕石が落ちた証拠である地層は「K/Pg境界」と呼ばれている。このK/Pg境界の地層には、地表にはほとんど存在しないはずのイリジウムという元素が急増すること、石英の結晶の中に物理的な衝撃が及ぼされた痕跡などが確認されている。
このK/Pg境界付近の化石について調べることが、古生物学の世界でいま最もホットな研究のひとつとなっている。K/Pg境界の地層には、まさに恐竜たちが大量死して、屍が累々としているような化石があるのかもしれない。その化石の解析から、絶滅の詳細や恐竜なき時代の生物たちの進化の様子がより明らかになるだろう。
6600万年前の大量絶滅の前後から分かることについて、国立科学博物館 標本資料センター・コレクションディレクターの真鍋真氏に聞いた。
化石で分かる太古の環境
――K/Pg境界付近の化石について調べることで、どんなことが分かると期待されているのでしょうか?
真鍋真氏(以下敬称略) 恐竜たちの一部は鳥となって現在も生きていますが、6600万年前に恐竜の大部分は滅びたわけです。6600万年前に恐竜の時代がどのようにして終わったのかを調べることは、環境の変化と生物の進化の関係を知ることにもつながります。