中国の内モンゴル自治区の湖・チャガンノールから出土した竜脚類ヌーロサウルスの化石。フフホト市内の内蒙古博物院にて筆者撮影

 突然だが、スズメやカラスが恐竜であることはご存知だろうか? 近年の研究によると、鳥が小型獣脚類(映画『ジュラシック・パーク』に登場するヴェロキラプトルの種類である)から進化したことはほぼ確実であるばかりか、鳥類と小型獣脚類の間に学術上の厳密な線引きをもうけることすら困難であるという。

 近年の古生物学の世界において、“恐竜”という生物のわかりやすい定義は「スズメとトリケラトプスの最も近い共通祖先から生まれた子孫すべて」と説明される。私たちが日々、タマゴを目玉焼きにしたり肉にタレと七味唐辛子をかけて晩酌のツマミにしている生物の正体は、実は恐竜(のある系統の子孫)だったのだ。

小型獣脚類デイノニクスの化石(左)と、鳥類の始祖鳥の骨格模型(右)。区別が難しいほどよく似ている。アメリカ自然史博物館で筆者撮影

中国は恐竜の化石の宝庫

 鳥類=恐竜説が根拠付けられるうえで大きな役割を果たした国は、実は中国だ。1990年代半ば、東北部の遼寧省において羽毛の痕跡が明確に確認できる小型獣脚類・シノサウロプテリクス(中華龍鳥)が出土。以来、現地の熱河層群と呼ばれる地層から、羽毛痕跡を持つ恐竜の化石が続々と発見されたのである。

 熱河層群からはティラノサウルスの祖先やその仲間も見つかっている。2004年に発掘されたディロング(帝龍)は白亜紀前期に生息した体長1.6メートル程度の小さな恐竜だが、やがてアジアからベーリング海峡(当時は陸地でつながっていた)を通じて北米に渡り、約3500万年をかけて体長13メートルのティラノサウルスに進化したという。

 このディロングの化石にも羽毛の痕跡が認められた。さらに2012年に熱河層群から出土したティラノサウルスの仲間、ユウティラヌス・フアリ(華麗羽暴龍)は、体長9メートルという巨大な羽毛恐竜として学会を騒がせた。