社内で「どんな研修ニーズがありますか」と訊ねるのも、これと同じことなのです。「自律して仕事をできるようにして欲しい」「後輩の育成をできるようにして欲しい」「成果を確実に出せるようにして欲しい」などと、テーマが大き過ぎたり、逆にピンポイント過ぎたりなどと、要望の粒の大きさがバラバラになってしまうでしょう。こうなると研修メニューの整理が非常に難しくなります。しかも、研修を受けても習得に時間がかかるものも多いのに、このご時世、成果に直結する事を強く求められてしまいます。その上、実際に参加してくる社員の顔ぶれはと言えば、本来受けて欲しいような人ではなく、ラインから外れた人や仕事があまりできない人など、時間が作りやすい人たちばかり。それもあって教育プログラムを施す側は経営幹部から「研修の成果が表れていない」など批判されてしまうのです。

研修のトレンドは『北斗の拳』から『ジョジョの奇妙な冒険』へ

 こうした事態は、研修メニューの設定が正しくないから起こってしまうのです。

 社員教育の流れは、かつての『北斗の拳』スタイルから『ジョジョの奇妙な冒険』スタイルに変わっています。どういうことかと言えば、『北斗の拳』のケンシロウは、多数の流派、多数の拳、ラオウが相手でないと使わないような秘奥義まで身に着けています。これは最強です。ただ、その習得には時間がかかるので、一子相伝にならざるを得ません。しかし、今の企業にはそこまで育成に時間をかける余裕はありません。育てている途中で状況も変わります。

 そこで求められているのが『ジョジョの奇妙な冒険』のスタイルです。『ジョジョの奇妙な冒険』では、仲間が一丸となって、各人のスタンド(独自の個性)を活かしながら、さまざまな難局を乗り切っていきます。同様に、一人で何でもできるケンシロウを育てるように時間をかけて育成するのではなく、すぐできるようにさせるスキル、多少時間がかかっても社員全体で底上げするスキル、個別ピンポイントのスキルが上がるように研修プログラムを充実させるのが最近の主流です。

 また、昔のように「人材育成に時間は時間がかかる」という正論は、人事のプロとしては言い訳にならない時代です。短期、中期、長期でどんなアウトプット(人材の「質」と「量」)を出すか、いかに社員が“成長している感”を実感できる状態を生み出すか、どんな成果に繋がっているかを示していかなければなりません。そのためには、現場の現実的なスケジュールを加味して研修プログラムを組まなければなりませんが、これはコツを掴めば意外と簡単です。