思考系は「一粒で二度美味しい」ノウハウに

 思考系の研修メニューには絞り込みも必要です。しかり方、褒め方、コーチング等、部下指導に対して細切れのスキル習得をさせるのは、『北斗の拳』の世界です。これからは一つ学べば応用が効くシンプルなノウハウに絞り込んで、繰り返し鍛えることで、成長感を掴ませながら、段階的に引き上げていくといいでしょう。

 一つの例としてソラ・アメ・カサを紹介します。

 ソラ・アメ・カサとは、問題解決に必要な抑えどころの枠組みですが、「報連相」のレベルをあげ、ワンランク上の洞察力を手に入れ、意思決定に繋げる縦・横のチャートづくりにも活用できるものです。ソラ・アメ・カサとはマッキンゼー日本支社が考えた思考のフレームワークです。

ソラ:「空が曇ってきた」(事実)
アメ:「ひと雨きそうだ」(洞察)
カサ:「傘を持っていこう」(打ち手)

 この3段階の思考パターンをセットにして伝えれば、誤解なく相手に伝わり、正しく判断してもらえる、というのが基本の形です。この3つがセットでないと経営者は正しく判断できないのですが、意外と日本企業では省略されがちなのです。

 話す順番は関係ありません。この3つがセットになっていれば誤解なく伝わるので、相手が結論から知りたければ、カサから。論点から知りたければアメから。事実からしりたければソラから話せばいいのです。

 現場のマネジメントにも活用できます。報連相はソラです。現場の情報をタイムリーに正しく伝え、指示を待つのが報連相だからです。

 アメは上司の頭の中にしかないので、打ち手のカサの解釈が上司と部下でズレてしまうことが発生しますが、ソラ・アメ・カサで確認すればそれがなくなります。一つ上の視点はアメの洞察力の違いです。同じ現場をみても解釈に違いがでるのはこのアメの差です。報連相は上司の頭の中にしかアメはありませんが、ソラ・アメ・カサなら「アメ」を上司と確認できるので、一つ上の視点を部下が手にいれることができます。縦・横の分析は横軸にソラ・アメ・カサを置き、項目を詳細化します。縦軸は検討すべき事案か、3C(競合、顧客、自社)などのフレームワークを置き、埋めていけば簡単に意思決定を募るチャートがつくれます。

 本連載でもソラ・アメ・カサは『「ソラ・アメ・カサ」なら1分で物事を整理できる』(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54372)で詳しく解説しているので参考にしてください。

 誌面の関係で今回はソラ・アメ・カサのみ紹介しましたが、他にも一粒で二度美味しいノウハウはあるので、次回以降の連載を楽しみにしてください。