PTAの主な担い手だった女性の多くが働いており、PTA活動に参加できなくなっているPTAの主な担い手だった女性の多くが働いており、PTA活動に参加できなくなっている(写真:Kaidevil Photo/Shutterstock.com)

太田 肇:同志社大学政策学部教授)

「岡山県PTA連合会」解散発表の衝撃

 私たちの身近な組織であり、存在するのが当然と思われていたPTAが揺らぎ始め、崩壊の危機に陥っている。

「ついに……」という印象を与えたのが、岡山県PTA連合会の解散発表だ。加盟する団体の退会が相次いで会費収入が激減し、財政が成り立たなくなったのが大きな理由である。

 PTAが上部団体から退会する動きは各地に広がっており、昨年は東京都PTA協議会が全国組織の日本PTA全国協議会(日P)から退会し、千葉市PTA連絡協議会も退会の方針を決めているという。

 かつては子どもが学校に入学したら、親はPTAに入るのが当たり前だと考えられていたが、近年はPTAへの加入が任意だということが知れ渡り、実際に入会しない保護者が増えている。

 背景にあるのは、PTAに対して距離を置きたいという「PTA離れ」の進行だ。筆者は2022年に外部機関に委託して中学生以下の子を持つ親に対し、ウェブ方式で意識調査を行った(有効回答508)。

 まず「PTAの活動は盛んなほうがよいですか?」という質問に対し、「そう思う」「どちらかといえば、そう思う」という回答が合わせて18.7%にとどまる一方、「そう思わない」「どちらかといえば、そう思わない」という回答は合わせて77.4%と、4分の3以上に達した。

 また「PTAの活動には、深く関わりたくないと思いますか?」という質問には、「そう思う」「どちらかといえば、そう思う」という回答が合わせて71.0%と圧倒的多数を占めた。その理由としては、「面倒」「煩わしい」「時間をとられたくない」とか「無意味」「ムダ」などを挙げる人が多かった。

 周知のとおり、PTA会員の中でも負担が重いのは会長をはじめとする役員であり、立候補者がいないので本人の意思とは無関係に選挙や抽選で選ぶのが通例になっている。

>>【写真】いまだに有無を言わせぬ「役員の割り当て」を行うPTA組織は多い

 そのため選挙で選ばれないよう、普段からPTAに対し意識的に関わらないようにしている人が多い。前出の調査では「会議では、できるだけ発言しないほうがよいと思っていますか?」と質問したところ、59.0%とほぼ6割の人が「そう思う」「どちらかといえば、そう思う」と回答した(以上の意識調査の詳細については太田肇著『何もしないほうが得な日本/PHP新書』を参照)。

 本当は活動に参加してみたい、発言したいと思っている人も役員に選ばれることを恐れ、PTAとあえて距離を置いている様子がうかがえる。