「PTA離れ」がここまで進んだ最大の要因

 では、なぜこれほど「PTA離れ」が進んだのか?

 PTA活動の主な担い手だった女性の多くが外へ働きに出るようになり、活動に割ける時間や労力が減ったことが大きな理由であるのは確かだろう。また子育て環境や教育環境など社会のインフラが整備され、保護者がPTA活動の必要性を以前ほど感じにくくなったという背景もある。

 しかし、もっと根本的な組織的問題が存在する。それは「大いなる勘違い」とでも呼ぶべきものだ。

 PTAは「Parent-Teacher Association」の略称であり、親と教師が協力して子どもたちの健やかな成長を支援するための自発的な組織である。一人一人が自発的に参加し、活動するという趣旨はボランティアの組織と同じだと言ってよい。したがって自分たちが中心になって組織をつくり、必要に応じてほかのPTAと連帯していくのが本来の姿である。つまり組織づくりはボトムアップが基本になる。

 ところが現実は逆だ。戦後アメリカの指導のもと、国がトップダウンで全国的にPTAの組織づくりを推進した。その結果、今日のように日Pを頂点として、都道府県・政令市のPTA、市町村のPTA、そして学校単位のPTAというピラミッド型の組織が形成された。そして上位団体が会議や研修への参加を求めたり、指導を行ったりするなど一般企業や役所の組織と似たような運営が行われるようになった。

 上部団体との関係だけではない。問題が多いのはむしろ個々のPTA(単P)の内側だろう。全員入会を前提にした会の運営や、有無を言わせぬ役員の割り当て、頻繁に開かれる会議への出席要請、入学式や卒業会など学校行事の下請け的な業務など、自発的組織、任意団体にはそぐわない運営が行われているのが現状だ。

いまだに全員入会を前提にした会の運営や有無を言わせぬ役員の割り当てなどを行うPTA組織は多いいまだに全員入会を前提にした会の運営や有無を言わせぬ役員の割り当てなどを行うPTA組織は多い(写真:takasu/イメージマート)

 企業や役所のような組織では、当然ながら上司の命令や組織の規範に従う義務があり、メンバーはそれを受け入れる代わりに報酬を得ている。したがって気が乗らない仕事や、少々納得できない命令でもメンバーは受け入れなければならない。

 ところがPTAのような任意団体において、同じ感覚で組織を運営しようとすれば離反や反発が生まれるのは当然だろう。