「見逃し」厳禁
国家の危機管理の世界では、「『空振り』はしてもよいが、『見逃し』をしてはならない」と、よく言う。
野球なら、「空振り」でも「見逃し」でも、三振に変わりはない。だが危機管理の場合、まったく異なる。
例えば、北朝鮮が新型ミサイルを発射したとする。日本政府は直ちに「Jアラート」を鳴らして、国民に警鐘を発する。だが幸い、ミサイルは日本海に落下し、日本列島まで来なかった。
この場合、日本列島にミサイルは落下しなかったのだから、「Jアラート」は「空振り」だったことになる。それでも、日本政府が非難されることはない。
だが万一、逆に「Jアラート」が鳴らず、北朝鮮のミサイルが、日本列島に落下したらどうなるか? 「見逃し」によって、時の内閣が総辞職を迫られるほどの失態となるに違いない。
そのため、危機管理においては、とにかく「見逃しをしない」ことに尽きる。それには、「老婆心を持って、常に最悪の事態を考えておく」ことが肝要だ。