すると中国は、海警局の大型船団を駆使して、「テレサ・マグバヌア号」を取り囲んで、「兵糧攻め」にした。かつ8月末には、計3回も衝突している。フィリピン側が公開した映像は衝撃的だ。

フィリピンの巡視船、ついに撤退

 そして、ついに力尽きた「テレサ・マグバヌア号」は、9月14日に「悪天候のため」という理由をつけて、サビナ礁から撤退したのである。そのことに対する中国側の「勝利宣言」が、上述の発表文というわけだ。

9月15日、サビナ礁から撤退し、フィリピン・パラワン州のプエルト・プリンセサに入港するフィリピン沿岸警備隊のテレサ・マグバヌア号(提供:Philippine Coast Guard/AP/アフロ)
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 フィリピン沿岸警備隊は同日、「テレサ・マグバヌア号」の5カ月にわたる健闘を称えた。

「彼らは、海洋環境を脅かす違法行為に対抗してきた。そして、この地域で密かに埋め立てを行おうとする他国による試みを阻止する上で、確固たる存在感を持って、重要な役割を果たしてきた……」

 だが、フィリピン側の負け惜しみのようにも受け取れる。今後、この地域における中国の脅威は、増していくに違いない。加えて、フィリピンが頼りにする軍事同盟国のアメリカは、周知のように現在、大統領選挙キャンペーンの真っただ中で、フィリピンに加勢する余裕はない。