軽井沢に誕生した軽井沢風越学園軽井沢に誕生した軽井沢風越学園

 古くからの別荘地・避暑地として知られる長野県軽井沢。コロナ禍以降、自然豊かな環境を求め、東京などから移住する人も増えている。そんな軽井沢の森の中に、少し変わった学校がある。2020年に開校した軽井沢風越学園である。

 同校は幼稚園と小学校、中学校からなる私立の幼小中混在校。“混在校”と謳っているように、学年ごとに分けられたクラスはなく、近い年代の子どもたちがともに学んでいる。事実、校舎を覗けば、車座になった子どもたちが仲間や先生とワイワイ議論している光景が目に入る。

 授業は、教師が黒板の前に立って画一的な教科を教える一斉授業ではなく、子どもたちの興味・関心に応じて自ら学び、その学びを深めていくことに徹した個に応じたもの。テストはなく、幼稚園から中学までの12年間、遊びや環境、そして様々なプロジェクトを通して、探究活動を進めていく。

 講義中心の一斉授業、画一的なカリキュラム、固定的な学級編成という従来型の学校教育とは全く異なる学校だ。

 この新しい学校をつくった立役者は、元楽天の副社長で知られる理事長の本城慎之介氏。なぜ従来の学校とは異なる学校を設立したのか。本城理事長に話を聞いた(聞き手:篠原匡、編集者・ジャーナリスト)

※このインタビューは、風越学園の「地球と人」という5、6年生向けの授業の一環で行われました

──風越学園では従来の小中学校とは全く異なる教育を実践しています。改めて、風越学園はどういう学校なのかという点をお聞かせください。

本城慎之介氏(以下、本城):なかなか一言で説明することが難しいので、まず外形的なところからお話しします。

 風越学園は、幼稚園、小学校、中学校が一緒になった学校で、3歳から15歳までの294人が一つの校舎で学んでいます。大きな特徴は、子どもたちが「混ざっている」という点。普通の小学校は1年生から6年生まで、年齢に応じてクラスが分かれています。もちろん、小学校と中学校も別々です。

 でも、学校以外の社会は年齢別には分かれていません。会社のような組織でも、30歳の人がいれば、40歳の人、50歳の人もいるというのが日常です。社会が年齢で分かれていないのであれば、学校も混ざって学ぶほうが自然。そこで、「混ざる」ということを大切にした学校をつくりました。

風越学園では年齢別の学級編成をとっていない風越学園では年齢別の学級編成をとっていない

 もう一つの特徴は、子どもたちが自分の学びを「つくる」という点です。個に応じたものを大人が準備し、子どもに提供するのではなく、自分にあったものを自分でつくるということを重視しています。

 個に応じた学びは最近の教育のトレンドですが、大人が用意してしまうと、子どもが考えなくなってしまうと思うんですよね。ああ、僕に合ったいいものが来た。これを読もう、着よう、食べよう、というふうに。

 ニュースでもそうです。「フィルターバブル」という言葉があるように、今の時代は自分に合ったニュースがどんどんレコメンドされてきます。でも、それが本当に自分に合っているのかということを意識せずに、与えられた記事を読んでいる。僕はそうした現状にとても危機感を持っています。

 そうした問題意識があって、風越学園では自分の学びや暮らしを自分でつくるということを重視しています。幼稚園から中学校まで、様々な年齢の子どもが一緒に学ぶというかたちを取っているのも、学校の中が多様であったほうが何かが生まれやすいと考えているからです。