夢の中に出てきた三木谷氏の“お告げ”

本城:2015年の秋、夢の中に三木谷さんが出てきたんですよ。夢の中で、「本城、お前の使命はなんだ」と怒られまして。そこから本腰を入れて学校づくりを始めました。

──一般的に学校をつくるのは大変だと思いますが、どのようなご苦労があったのでしょうか。

本城:実は、それほど苦労していないんです。

 2009年から軽井沢に住み、そこで自分の子どもも育て、保育に関わり、地元で御神輿も担ぎ……という暮らしをしている中で、地域のネットワークがかなりできていたんですよね。僕のことを支えてくれる人がたくさんいたので、やると決めた後はトントン拍子で進んだ感覚があります。

──開校して5年目になりますが、ここまでの手応えはいかがでしょうか。

本城:手応えについて言うと、風越学園の設立前に、「こんな学校になっていればいいな」という情景を物語として書きました。朝はこんな感じ、お弁当の時間はこんな感じと、コンセプトや理念を考える前に、情景を考えたんです。

 詳しくは風越学園のウェブサイトを見ていただければと思いますが、学校から家に帰ってきて、「あー、今日も楽しかった、明日も楽しみ!」と子どもが話せる学校にしたい、という思いが私たちの根っこにあります。

 そこに近づいている部分もあれば、いい意味で思い切り外れている部分もあります。そう考えると、手応えはたっぷりと感じています。

風越学園の図書室。子どもたちが様々なジャンルの書籍を手に取れるように●万冊の蔵書がある風越学園の図書室。子どもたちが様々なジャンルの書籍を手に取れるように3万5000冊の蔵書がある

──子どもたちはどんな大人に育っていってほしいですか?

本城:開校から5年が経ち、最初に卒業した子どもたちは高校2年生になりました。それぞれの子がそれぞれの場所で頑張っていますが、やはりつくり手の一人として自分のいる場所をより良くしていってほしい。

 だから「どんな大人に」という質問に対しては、幸せになってほしいし、自分の場所を自分でつくっていける大人になってほしいと思います。

篠原 匡(しのはら・ただし)
 編集者、ジャーナリスト、ドキュメンタリー制作者、蛙企画代表取締役
 1975年生まれ。1999年慶応大学商学部卒業、日経BPに入社。日経ビジネス記者や日経ビジネスオンライン記者、日経ビジネスクロスメディア編集長、日経ビジネスニューヨーク支局長、日経ビジネス副編集長を経て、2020年4月に独立。著書に、『神山 地域再生の教科書』(ダイヤモンド社)、『誰も断らない こちら神奈川県座間市生活援護課』(朝日新聞出版)、
グローバル資本主義vsアメリカ人』(日経BP)、『腹八分の資本主義』(新潮新書)、『おまんのモノサシ持ちや』(日本経済新聞出版社)、『神山プロジェクト』(日経BP)、『House of Desires ある遊郭の記憶』(蛙企画)、『TALKING TO THE DEAD イタコのいる風景』(蛙企画)など。『誰も断らない 神奈川県座間市生活援護課』で生協総研賞、『神山 地域再生の教科書』で不動産協会賞を受賞。テレ東ビズの配信企画「ニッポン辺境ビジネス図鑑」でナビゲーターも務めている。