実用性を失った食堂車と機内食が今も存在する理由

高速化や価格競争の中、「趣味性」に活路も

2019.08.09(Fri)漆原 次郎

 では、「実用性」が失われたからといって、食堂車・車内販売、機内食がまったく無くなるかというと、そうはならないだろう。別の需要、つまり車内や機内で食を得ること自体を目的とし、楽しもうとする乗客たちの求めは根強くあるからだ。道中食の「実用性」は相当に失われても、まだ「趣味性」は残されている。

 となれば当然、鉄道や旅客機での食のサービスは、それを求める乗客向けと、求めない乗客向けに二極化してこよう。

 鉄道で、いま食堂車があるのは、JR九州の「ななつ星in九州」、JR西日本の「トワイライトエクスプレス瑞風」、JR東日本の「トレインスイート四季島」、私鉄では明知鉄道の「大正ロマン号」など。いずれも明らかに「鉄道で食事をとる」ことの特別感を意識している。

 一方、JR東日本が2019年3月をもって、新幹線「はやぶさ」などの一部区間、また在来線特急「踊り子」「草津」などで車内販売を終了した。同社は「お弁当や飲み物を乗車前に購入されるお客さまが増え、ご利用が減少しております」と理由を述べる。普通の食事を提供する車内販売は、これからも縮小していきそうだ。

 旅客機については、日本航空も全日空も、有名料理店のシェフや料理長たち監修の料理や酒類を、国際線をはじめとする便で提供している。これらの取り組みには、「空の食」を贅沢に味わいたいという人びとに応えることのほか、特別な機内食で話題性を提供するといった狙いもあるだろう。

 その一方で、2010年代に参入した低コスト航空会社(LCC)は、相次いで機内食を有料販売とした。「空飛ぶ電車」を目標に掲げ、“車内販売”するように機内食を販売するピーチ・アビエーションのような企業も現れている。

 食堂車や車内販売、機内食などの歩みを眺めると、これら道中食は明らかに「実用性」から「趣味性」への転換期、ないし転換後にあることが分かる。もっぱら「趣味性」の比重が大きくなった鉄道や旅客機での食に対し、企業はどれだけ力を注ぎ込むのか。今後、その姿勢がより鮮明に見えてきそうだ。

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