目先の給料額よりも賃金カーブをチェック

「自分より仕事ができない先輩の方が給料高い」、「大学同期でたいしたたことないやつだったのに倍以上の給料を貰っている」などと、どうしても目先の給料額は気になるものです。

 実はここに盲点があります。サイバーエージェントやメルカリなど、一部の会社では初任給額を資格などで変える動きがありますが、大半の企業は横並びで、どの業界に入っても差は数万円しかありません。ところが、業界別の報酬水準を知らないと、35歳を過ぎたときに慌てることになりかねません。実はどの業界に入るかで、その後の出世に関係なく、同期の間に埋められない報酬格差が発生するのです。

 そこで、まずは賃金カーブをチェックしましょう。賃金カーブとは年齢毎にいくら給料がもらえるか、モデル水準を示したものです。日本では新卒から若手の時はあまり報酬水準に差がつかず、35歳を過ぎたあたりから報酬格差が広がるように賃金カーブが設定されていることが大半です。

 図1をご覧ください。危険な3つの賃金カーブがあります。

【図1】危険な3つの報酬カーブ

① 初任給からあまり上がらない
 初任給から少しずつしか昇給しない昇給モデルです。いわば、仕事に対する生産性が年齢や経験によってほとんど変わらないものです。「このお仕事はいくら」と値札がついているものです。コールセンターのスタッフやカフェの店員はこのような賃金カーブになっていることが珍しくありません。「カフェの仕事は大好きだけど、35歳を過ぎても年収300万円でこれ以上は上がる見込みがないのは厳しい。かといって、もうカフェの店長か店員でしか転職できない。若い時に知っておけば・・・」なんていうことにならないよう、必ずチェックしておいてください。

② 年功ベース
 若いうちはほとんど給料が上がらず、40歳を過ぎたら辺りから急に賃金カーブが上向き始めるタイプです。この賃金カーブの業界や組織にいると危険です。40歳を過ぎて潰しがきかなくなってから会社は社員に報いようとするので長期雇用が前提になりますが、令和の時代、長期雇用はリスクでしかありません。また、若いうちは給料に差がつかないので、成長意欲が薄くなります。そして仕事のできない中高年を増殖させることに繋がります。仕事ができない中高年は辛いものです。転職ができないので、周りを蹴落としてでも組織に残ろうとします。こうした醜い争いに巻き込まれてはいけません。

③ 30歳から報酬水準が寝る
 若い時にガンガン頑張って成果を出せば、昇進もするし給料も上がる組織です。一見素晴らしように思えますが、このタイプにも落とし穴があります。30歳を過ぎたころから賃金カーブが寝てしまうのです。そうなるとどうなるか? 頑張って成果を出しても給料の伸びが低くなるので、その組織で一生懸命頑張るのがバカバカしくなって社員がどんどん辞めていきます。そう、若手が汗を流して体力勝負で頑張るビジネスモデルの業界や会社にこのタイプが多く見られます。

 実はこういう業界や企業では、表に出ない優秀な人が裏側にいて、額に汗すれば誰でもできるビジネスモデルを設計し、現場を躍らせているのです。彼らは、「うちの会社の営業は優秀なので、どこに転職しても通じる」という認識を営業スタッフの間に広め、彼らが辞めていくことを当然の仕組みにしています。つまり、現場で頑張る若手はただの兵隊で、「個人技である程度までは成果が上がるが、その後は高い確率で壁にぶち当たる=その水準までは十分な報酬を払う=だいたい30歳くらい」という図式を前提にしたビジネスモデルを作り上げているのです。そして会社に残れるのは、新しいビジネスモデルを作れる人材か、兵隊を統括できる優秀なマネジメントだけという仕組みになっています。