そんなこといちいち他人に言われなくても、「儲かる業界ほど人件費の予算を高くとれそうだ」と想像は付いているかもしれません。であるなら、逆にどんなに大変な仕事でも、儲からなければ人件費を払いたくても予算がとれない実態があることもお判りでしょう。同じ仕事をするなら、より儲かるビジネスモデルの業界や会社の方が「おいしい」のです。

「いつでも転職できる」を武器に

「安定的に」というのは社員の雇用期間とビジネスモデルの安定性です。外資系コンサルティングや投資銀行は高年収でないと優秀な人材を雇えませんし、そうした人材でないと利益が出せません。ただ、雇用期間が比較的短期なので高い報酬が払えるという側面もあるのです。別の雇用スタイルとして、新卒を採用して社内で成長させていくというケースもありますが、外資系では、育成コストがかからない人材を中途採用し、即稼いでもらうというスタイルが主流です。基本的に定年まで働く業界であれば、育成期間の給料やコスト、それから定年後の退職金まで会社が負担するので、その分だけ報酬水準をあまり高く引き上げられないのです。

 それに、どんなに儲かっても、そのビジネスの寿命が短いと、その業界の人たち全員に高い報酬を払い続けることは難しくなります。読者の皆さんはルーズソックス、白いたい焼き、ハイパーヨーヨーのことは覚えているでしょうか。いずれも一時、大流行しましたが、今では目にする機会はほとんどありません。というように流行り廃りが激しいビジネスではどんなに儲かったとしても、ボーナスを一時的に上げるくらいしかできないのです。

 ミクシィは2017年発表の「一人当たり営業利益が高い企業ランキング」(東洋経済オンライン)で2位。一人当たり約1億4000万円も営業利益を上げているのですが、平均年収が694万円にとどまっているのも同じ理由です。実際、2015年の同じ調査では、ミクシィはトップ500社の圏外でした。儲からない業界にいればどんなに我慢して頑張っても給料は上がらないのです。移るべきか、残るべきか、人生の節目や長期の休みの時に考える勇気を持ちましょう。

 大事な事は、移るか残るかではありません。希望的な観測を持つことのではなく客観的事実を受け入れ、自分らしく、認められ、やりがいを持ち、稼げる場所を知り、そこへの移り方、活躍の仕方を知ることです。もっと簡潔に言うなら、「いつでも転職できる」を武器にすることです。この武器さえあれば、仕事の奴隷にならずにすみます、解放されます。

 そこで今回から数回に分けて、「いつでも転職できる」武器の仕入れ方を解説していこうと思います。