しかし、それでは成長をエンジョイし、80歳現役力をつけて、長い人生の中でいろいろなことをやって豊かに人生を過ごしていくといった、ライフシフト能力は身につかないのは自明だ。

 それゆえ、社内に閉じず時代とともに成長して、世間にありがたがられるプロの力を身に付けていくこと、すなわち知の再武装が必要なのだ。そうしてこそ、究極の能力である「一人事業主力」が身につく。

 定年後は、結局のところ自分で生きていくしかない。新たに雇われるにしても、独立・起業するにも、自分を商品として売れなければ厳しい。そうしたプロとして認められ稼げる力が一人事業主力だ。

 したがって、知の再武装とは、カルチャーセンターに通うことではないし、資格取得だけを指すものでもない。実践経験に裏打ちされたプロとしての知的プロジェクト推進力をつけることだ。

 その力を獲得できるのが社会人大学院のMBAコースだろう。筆者が研究科長をしている多摩大学大学院では、まさに「知の再武装」を目的に、人生をイノベートする人材を育成している。技術も科学もどんどんと進化している。業界もビジネスモデルもどんどんと変わっている。そんな変化を貪欲に吸収し、自分の問題意識と人生のビジョンを持って、社会に足跡を残す人物を育てている。

 それだけの知のパワーを身に付けなくては、すさまじいまでに変革しつつある時代に立ち向かい、自分の居場所は作るということはできないだろう。GAFA*1を一消費者としてエンジョイしている場合ではなく、彼らとどう向き合い、競争・共創していくのか、真剣に考えるためにも、知の再武装の覚悟を持ってほしい。

 ライフシフトへの挑戦は、それが生き方の変革であるため時間がかかる。早めの対策が重要だ。ぜひ一刻も早く知の再武装に取り組んでほしい。

(参考)徳岡晃一郎『40代からのライフシフト 実践ハンドブック:80歳まで現役時代の人生戦略』(東洋経済新報社)

*1:世界を席巻するIT企業のグーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルの頭文字をとった造語。