人生というキャリアの中で、人はさまざまな役割を担う。

 このところ、「100年人生」という言葉をあちこちで聞く。世界に先駆けて超高齢化が進む日本では、とてもリアリティがあるテーマだ。100年人生の時代には、終身雇用で勤め上げた会社を60歳で定年し、隠居生活に入る、そんなキャリア観はきっと過去のものになる。

 そこでここでは、「キャリア観」のこれまでの変遷と、これからどのように変わっていくのか、考えてみたい。

キャリア観1.0:キャリアの成功は「出世」

 1970年代の高度経済成長期、いわゆる日本的雇用が確立された。高度経済成長期には、事業がどんどん拡大し、それが長きにわたって続くと思われたため、企業は長期的に人材を確保する必要性にかられ、終身雇用や年功的賃金制度を導入したのだった。

 終身雇用で1つの会社に勤め上げるのであれば、職業キャリアの成功は、その会社における成功、つまり、出世になる。課長、部長、役員、社長と職位を上っていくことが、職業キャリアの成功を意味していた。

 なお、この時期の日本的雇用は、男性・正社員が稼ぎ頭で、女性は専業主婦という性別役割分業の上に成り立っていた。そのため、職業キャリアは実質的に男性だけのものだった。

キャリア観2.0:目指すキャリアは「プロフェッショナル」

 1990年代に入りバブルがはじけると、企業を取り巻く競争環境は厳しくなり、事業のリストラクチャリングや、正社員以外の雇用形態が広がっていく。大企業の倒産も相次ぎ、60歳まで会社が雇用を保障してくれるという期待は持ちにくくなった。

 企業が事業の選択と集中に舵を切り、社員に高い専門性を求めるようになる一方で、人数の多い団塊世代の加齢により、管理職ポストが不足していった。そこで企業は、マネジメントとスペシャリストの「複線型人事」を導入するようになる。