義務と化した働き方改革は歓迎されているのか
働き方改革が佳境である。デロイト トーマツ コンサルティングが2017年9月に発表した調査結果では、すでに企業の73%が働き方改革に着手している*1。2015年の同調査では34%に過ぎなかったことを考えると、政府の大号令によって、働き方改革は民間企業に大いに浸透し、もはや「義務」になった感すらある。
ただし、現実を見ると、働く人々が働き方改革を大歓迎しているとは、とうてい言えないようだ。同調査では、働き方改革で従業員満足が得られたと答える企業は28%に過ぎない。
実際、筆者がセミナーなどで訪問する企業の従業員に「働き方改革が始まって、何かいいことがありましたか」と問うと、「残業代が出なくなっただけ」「今まで好きなように働いていたのに、突然、早く帰れとか在宅ワークをしろと会社から強制されても困る」「これまでのやり方を変えるのは面倒だ」「会社がいつ働き方改革をやめるのか、待っている」といったネガティブな意見もたくさん出てくる。
先日、NHKの番組で取り上げられたのは「フラリーマン」。仕事が終わってもまっすぐに家に帰らない男性たちを指すのだそうだ*2。
退社後、おにぎりを持って公園で読書をした後にカフェに寄り、さらにバッティングセンターにも寄ってから帰るという男性。週に3~4日は書店や家電量販店で2時間ほど過ごしてから帰るという男性。働き方改革で会社を早く出られるようになったからといって、すぐに家に帰るのには、何か抵抗があるのだという。
仕事の時間と家族との時間の合間に、ひとりで息抜きする時間も、大切な時間だ。だから、こうした行動を頭から否定するつもりはないが、働き方改革の進展にともなってフラリーマンが増加しているのだとしたら、それはそれで何かがおかしいとも感じる(ちなみに、働く女性にも、主婦の女性にも、このような時間は必要だと強く思う。もしも、フラリーマンの自覚がある男性がこの記事を読んでくれているのなら、是非、週に2回か3回は妻にもその権利を譲ってあげてほしい)。
なぜ早く帰らなくてはいけないの? この質問にどう答えるか
このように、ビジネスパーソンの「働き方を変えて早く会社を出ること」に対するモチベーションが低いままでは、働き方改革は早晩失速しかねない。モチベーションを上げるには、早く帰れるようになった暁にやりたいこと・やるべきことのイメージが膨らんでいることが大切だ。だが、そのイメージがやや貧困だと感じている。