教師用指導書の作成や生徒の評価方法の改定、現職教員向け研修指導要領の作成と教員研修も実施されている。

 子供たちが進んで手を動かして実験や観察に取り組み、考え、意見交換するよう促す新カリキュラムを実践するには、教師自身も認識を改め、一人ひとりの様子にこれまで以上に気を配らなければならないためだ。

 実際、冒頭のドラマでは、理科の授業中に土を観察している子供たち一人ひとりに目配りしつつ教室をゆっくり歩き回る女性教師の姿をカメラが丁寧に追う。

 新旧の教育思想の違いや、現場で起こり得る混乱と誤解を丁寧に描いたこのドラマは、昨年、新学期の開始に先立ち制作されたCMとともに、新しい教育を保護者や現場の教師、広く国民に知らしめるという大きな役割を担っているのだ。

自ら学べる子を育てる教室

小学生役の子供と川島加奈惠さん。

 構想から脚本、演技指導、編集、放映まで、一連のプロセスの陣頭指揮を執ったのは、日本の国際開発コンサルティング企業の一つ、パデコの川島加奈惠さんだ。

 「新しいカリキュラムに賛同し、柔軟に適応して授業に取り入れる若手教師と、従来の教え方に固執し反発するベテラン教師の2人を軸に、周囲の変化を描こう」――。

 設定はすぐに思いついたが、新しい教育の思想を正確に分かりやすく伝えるプロットに落とし込むべく、試行錯誤が続いた。

 川島さんが最初に考えたのは、ベテラン教師のクラスの方がテストの点が高いことを知って、「今のやり方は子供たちを遊ばせているだけではないか」「成績が下がらないか心配だ。これまでのように真面目に教えてほしい」と訴える若手教師のクラスの保護者たちを、校長が「次の試験を見ていてください」と説得。

 最終的には若手教師のクラスの点がベテラン教師のクラスを上回り、新カリキュラムの効果に皆が納得する、という内容だった。