ラストフロンティアと呼ばれるミャンマーで、日緬両国が官民挙げて開発を進めるフラッグシッププロジェクト「ティラワSEZ」。その現場で奮闘する挑戦者たちの物語を紹介する。
「食わず嫌い」しないポリシー高じて出家
「縁がある人にはできるだけお会いしようと決めてるんですよ」
突然押しかけた不躾を詫びる筆者に、ミャーナック社長の小林良輔さんは優しい笑顔で出迎えてくれた。「食わず嫌い、会わず嫌いはしないのがポリシー」と屈託がない。
よく通る快活な声で語られる話からは、確かに転機を迎えるたびにこのポリシーに従って行動してきた様子が随所に垣間見え、なるほど前評判通り面白い人だと思った。
2017年4月、水祭りの休暇を利用して近くのチャイカウーパゴダで出家し、剃髪・袈裟姿で3日間、瞑想の日々を過ごした。
それも、「気づいたら日本の本社で私が出家したという噂が広まっていたので、やるしかないと思った」と言う。チャレンジ精神は相当なもののようだ。
ミャーナックは、自動車部品をはじめ、工業用ゴム・プラスチック製品の開発や販売を100年近く続けてきたゴムノイナキ(名古屋市)が100%出資する会社で、ゴム製品のミャンマーにおける製造拠点だ。
ゴムノイナキは1919年設立で来年創業100年を迎える老舗商社で、ミャーナックのような製造子会社を子会社として抱え、メーカー機能も備えている。
実際、ミャンマーのほかタイのサイアムナック、インドネシアのネシナック、ベトナムのベティナック、チェコのユーロナックなど、海外9か国12都市に製造や販売会社をもつ。
ミャーナックは、経済成長で先行する東南アジア各国や中国の人件費高騰を受けて、生産能力を分散化するために開設した。2015年4月に登記し、2017年7月から操業を始めた。小林さんはその初代社長である。