木製の遮断機の脇で踏切警手の男性に聞き取り調査をする小倉さん(左端)と稲田さん(右から2人目)

26度の交差角

 「斜めに交わっているのが良くないですね」「遮断するならこの方向でしょうか」「今のままの方が合理的では」「日本仕様でいきますか」

 ひっきりなしに行き交う大型トラックや乗用車がエンジンをふかす音、線路を1本ずつ渡るたびに荷台がこすれ、ガシャンガシャンという金属音が響く中、真剣な面持ちで話し合う4人の男たちの声が途切れ途切れに聞こえてくる。

 ここは、最大都市ヤンゴンから首都ネピドーを通り、第2の都市マンダレーまで国土を南北に結ぶ幹線鉄道上にあるユェダーシェー駅とコンギィー駅の間の踏切。ヤンゴンから約300キロ北にある。

 線路と交わっているのは、同じ区間を結ぶ幹線道路だ。並行する高速道路は旅客バスや乗用車しか走行が認められておらず、大型トラックはすべてこの幹線道路を通らなければならないため、交通量は非常に多い。

 列車が接近していない時は、荷台いっぱいの荷物にビニールシートをかぶせた4トン以上はありそうなトラックが、一時停止もせず次々に進入してくる。

 先ほどから感じていた違和感の原因が、4人の会話でようやく分かった。線路と道路が直角に交わっていないのだ。一見して鋭角の交差角は、わずか26度しかないという。

 通常、日本の踏切は、線路と道路が直角に交わっていることが多い。角度が鋭角であればあるほど踏切を渡る渡線長が長くなり、転倒事故の可能性が高くなるため、交差角を45度以上にすることが法令で定められているのだ。

 実際には90度近い踏切がほとんどだ。そんな日本式の踏切に慣れた目には、この踏切の線路と道路、どちらが真っ直ぐでどちらが斜めなのか、時空がゆがんでいるような感覚に襲われる。