実際、日本でも1960年代初頭には年間3000件近い踏切事故が発生していた。

 その後、踏切内に取り残された車両を自動的に検知し、駅に通報したり、列車に即時停止を指示したりする特殊な信号機の開発など、さまざまな技術革新が奏功してその数は年々減少している。

 だが、いまだに年400件近い踏切事故が発生しているとの数字もある。

 その点、ミャンマーでは、いまだにすべての踏切が人力頼みだ。踏切警手は、隣駅から列車が発車したという電話連絡を受けるか、警笛が鳴るのを聞くと、遮断機の棒を下ろしたり、踏切柵を引き出したりして線路の横断を遮断。

 その後、接近する列車に緑旗を振って踏切に進入できることを合図し、列車の通過を確認すると、再び手動で踏切柵を開けるという作業を繰り返している。

 冒頭の踏切でも、踏切警手が2交替制で張り付き、踏切柵の開閉を行っているものの、実際には、列車の姿が見えてからも横断をやめない車両やバイクが多いのが現状だ。

 そんな様子を眺めながら、鉄道システムの運転と安全を担当する日本コンサルタンツ(株)の武元清博さんが「今は時速が最高60キロしか出ず、運行本数も少ないため何とかなっていますが、今後は到底間に合いません」と顔を曇らせた。

 改良後は最高時速が100キロまで出るようになり、ヤンゴン~マンダレー間の所要時間も14時間から8時間弱に短縮される。

隣駅から電話連絡を受ける踏切警手を見守るメンバーたち