しかし、それには大きな問題がある。まず、肝心の電気がない。

 列車がディーゼルで走り、列車の進入や発車の可否を知らせる信号も手回しハンドルで充電した電気によって作動している現状では、田舎に行くと線路の近くに電源がなく、最寄りの村からケーブルで引くしかないところも多い。市街地から離れるほど、その距離も長くなる。

 さらに、コストの問題も切実だ。

 稲田さんは、「本来、安全重視ということならすべての踏切を自動化すべき」だとしながらも、「ミャンマー側のローンが大きくなり過ぎないよう、全体見積もりを考慮しながら、自動化すべき踏切を1カ所ずつ検討しているのです」と、苦しい胸のうちを明かす。

 この日のお昼過ぎ、コンギィ―駅の隣のソァ駅構内を見て回っていた日本コンサルタンツの徳廣真一郎さんが、「この駅には、比較的安定している高圧の電源が来ているので簡単ですね」とほっとした表情を見せた。

 指差された箱状の施設は、変圧器だ。電力担当の徳廣さんは、各駅でこうして電源の有無を確認。近くに電源があれば容易に信号機器室に送電できるが、ない場合は車で周囲を走り、どこから引いて来ることができるかについても、併せて調査している。

 一方、高圧電源に比べれば比較的見つけやすい低圧電源にも課題はある。

図面を見ながら話し合う武元さん(右)と小倉さん