さらに、線路脇の小屋から出てきた踏切警手が遮断機を手で下ろし始めたのを見て、もう1つ気が付いた。踏切柵が道路をふさぐ形で置かれてからも、その柵と線路の間に三角形のスペースが空いているのだ。

 「日本では人が線路内に立ち入れないように遮断機と線路の間にスペースを空けないのが普通なのだが、ここは道路と線路が斜めに交わっている。道路に直角に柵を置くと、どうしたってスペースが空いてしまうのだなぁ」と1人がつぶやく。

線路と道路の交差点

 冒頭の男たちは、ヤンゴンとマンダレーを結ぶ前出の幹線鉄道を近代化するために派遣されているJICA調査団のメンバーだ。

 このうち、ヤンゴン~タウングー間のフェーズ1(約270キロ)については、2015年に調査が実施され、現在は施工に向けた準備が進められている。

 この日は、それに続くタウングー~マンダレー間のフェーズ2(約350キロ)の踏切を1つずつ回り、遮断機のタイプや道路幅、交通量、付近の様子を確認する作業が行われていた。

 「これだけトラックの横断が多ければ、ここは自動化しないと怖いですね」「それなら、遮断桿は両側に設置した方が良さそうだな」と話し合っているのは、電気技術開発(株)の小倉潔さんと稲田聡さん。

 2人の会話から分かるように、どの踏切を自動化すべきか検討し、概算コストを見積もることがこの調査の目的だ。

 線路と道路が交わる踏切は、本来、自動車や歩行者の走行と鉄道の通行をコントロールするという重要な役割を担っているが、それだけに事故リスクが非常に高い場所でもある。

線路と道路が鋭角に交わっている踏切の様子