11社が参加
4月下旬のある朝、ネピドー中央駅に隣接したミャンマー国鉄(MR)本社の会議室は、まだ8時過ぎだというのに異様な緊迫感に満ちていた。
「コ」の字型に配置されたテーブルには企業名が記されたネームプレートが等間隔に並べられ、各社の代表者が着席。その後ろ側、壁との隙間に並ぶ丸椅子には、同行者らしき人々が、まるで従者のように控えている。
口を開く者はいない。「ぶーん」とうなるエアコンの低音と、「カサカサ…」とこすれる紙の音、そして、沈黙に耐えかねたような誰かの咳払いだけがたまに響く。
奥のテーブルには分厚い報告書や図面が数冊積み上げられ、カーテン代わりに窓辺に吊り下げられた緑色の薄手の布が、外の強い日差しに照らされて柔らかいペパーミント色に浮かび上がっている。
彼らは、4月頭に地元の新聞にヤンゴン環状鉄道の改修工事を請け負う企業を募る記事、いわゆる「公告」が掲載されたのを見て集まったミャンマーの地元企業をはじめ、さまざまな国の施工会社だ。
この記事では、関心のある企業は、発注内容が記された入札図書を事前に購入した上でこの日の説明会に出席するよう書かれていた。
9時少し前にオリエンタルコンサルタンツグローバル(東京都新宿区)軌道交通事業部の山岡一雅さんと礒野淳一さん、そして日本工営・鉄道事業部の森嵜成宏さんが入室し、彼らに対面するように着席した。
ほどなくMRのマウンマウンテイン土木局長らも入ってきて、「今日はお集まりいただきありがとうございます」とあいさつ。
その上で、これから行われる改修工事が2014年4月から2016年8月にかけて実施された調査に基づき、ミャンマー政府の自己資金部分と日本の円借款部分の2つに分けて行われること、今回の入札は前者のミャンマー資金で行われる土木・施設改修工事に関するもので、路盤や軌道の改修、排水設備の整備、駅のプラットホームのかさ上げなどが含まれること、7月上旬には受注企業を選定し、10月には着工を予定していることなどを、淡々と説明した。