迫るタイムリミット

 さらなる困難にも直面した。

 いくら日本側とミャンマー側で施工を分担したとはいえ、実際は、日本が設置する信号や踏切はミャンマー側が改修する線路沿いに電線を敷設し作動させるため、仮に軌道や土木の施工に不具合があると、信号や踏切も連動して作動しない可能性がある。

 また、そもそもミャンマー側が軌道工事を終えないと、日本側が信号や通信のケーブルの敷設を開始できない。日本側は結果的に、丸ごと施工するより難しい工程管理と質の担保を迫られることになったのだ。

 同じことは、入札手続きについても言えた。

「 軌道・路盤 」 と 「技術仕様書」の打ち合わせにはMR土木局長も参加した(=調査団提供)
日本チームの助言を受けてMRが作成した入札図書

 近代化事業の全体を円借款で行うのなら、一連の工事はすべてJICAの調達ガイドラインに従い、国際入札によって調達される。

 しかし、土木・施設工事の主体がミャンマー側にあるということは、施工業者の調達や、設計・施工の瑕疵責任も、一義的にはMRが責任をもつということである。

 そこで日本側は、円借款部分の国際入札に向けた準備を進めながら、ミャンマー部分の入札手続きを見守っていたのだが、入札経験のないMRのプロセスは、当然ながら難航した。

 新規車両の運行開始予定から逆算すると、今年の雨期が明ける10月の上旬にはミャンマー側の軌道工事を着工しなければならないというスケジュールが引かれ、タイムリミットが迫り関係者の焦りも高まっていた2016年12月、MRからの1通のレターがJICAに届いた。

 「入札の手続きを適切に進められるよう、支援してほしい」と訴えるSOSだった。