「ミャンマー政府資金の工事なのに、なぜ?」と尋ねる参加者に対し、同氏は再度「今回の近代化は、日本の円借款で新しい信号システムの導入・設置工事と新規車両の調達を行い、ミャンマー資金で土木・施設改修工事を行うという2つの部分から成っている」と説明。

 その上で、「両者は密接に連携しており、同じ品質と基準で進めなければならず、日本部分が国際入札で行われる以上、われわれの部分も齟齬がないよう、国際標準に準じて進める必要がある」と回答した。

 また、「入札について分からないことがあればJICAに聞いてもいいか」という質問に対しては、「今回の発注者はわれわれMR。質問があれば、JICAではなくわれわれに問い合わせてほしい」ときっぱり答えた。

初めてのプロセス

 入札説明会は、事業の発注者にとっては応札者の関心や意向、意欲など、生の声を聞く機会であると同時に、その事業に応札するかどうか検討している企業にとっては、公示の内容を確認したり、参加条件を確認したり、競合他社を探ったりするチャンスだ。

 ライバルが一堂に会した冒頭の会議室にぴりぴりした空気が張り詰めていたのも、当然だろう。

 しかし、ここミャンマーの鉄道事業について、こうしたオープンな形で入札説明会が開かれたのは、これが初めてだ。

 無理もない。延伸や新線の建設を繰り返し、総延長6000キロ以上の鉄道網を国内に張り巡らせてきたMRだが、そのやり方はと言えば、デザイナーとして自ら設計図面を引き、実際の施工時には作業員を動員して直営で整備を進めてきたためだ。

 中古列車や発電機を海外から購入したり、国産のレールを調達したりした経験はあっても、工事を外部に発注して施工監理を行った経験はなく、入札のプロセス自体、これまで経験する機会がなかった。