前出の礒野さんは、「ミャンマー企業が施工経験を積み、成長する機会になってほしい」と狙いを話す。
今後始まる工事は、施工中も列車の運行を完全に停止させることはせず、1周を5つに分け、上り線と下り線を交互通行させながら、1ブロックずつ順番に進められる予定だ。来年5月まで24時間作業が続く。
設計コンサルタントが育つ土壌が醸成されてこず、土木人材の層の薄さが課題となっているこの国では、こうした国際標準の調達制度自体が、発注者にとっても、応札者・受注者にとっても、これまで経験したことがない新しい挑戦だ。
実際、冒頭の入札説明会でも、工事の全体像や今回の発注内容、条件など基本的な事項を尋ねる質問が多く、事前に配布された入札図書に目を通さないまま説明会に参加している企業も多かった。
とはいえ、海外からの投資が殺到し、今後、さまざまな公共事業が一層増えることが予想されるこの国にとって、近い将来、自ら発注主体となって国際標準の調達を行い、瑕疵責任も負えるようになる必要があることは論をまたない。
こうした中、現場調査や設計・施工に関する技術指導のみならず、実務に寄り添う形で行われた今回の入札プロセスに関する技術支援は、非常にユニークで、かつ、時機をとらえた内容であり、協力の意義は大きい。
入札説明会の会場で、発注主体としてのオーナーシップに満ちて応対するマウンマウンテイン土木局長の発言を聞きながら、「今回、MRが初めて自ら入札図書を作成した経験は大きい。ぜひ、別の入札事業にも応用してほしい」と顔をほころばせた山岡さん。
その言葉からは、さまざまな鉄道整備計画が目白押しのこの国において、MRが今後、海外の援助機関や民間企業と対等に話し、主体的に事業の入札プロセスを率いて事業を進めていくことができる体制になってほしいという願いが伝わってきた。
(つづく)