ビジネス環境が整っているほかの東南アジアに比べ手続きは煩雑極まりなかった。

 さらに、小林さんが今後、知恵の絞りどころになると見ているのが、人材の確保だ。

 人件費が高騰し続ける中国やインドネシアと比べてこの国の人件費がいくら安価だとは言っても、日本語が多少でもできる人材の平均給与は決して安いとは言えない。

 さらに、もともと人口がまばらな平野を切り開いたティラワSEZの周辺には住民が少ない。近隣の村まで対象を広げて求人しているものの、思ったように人材の採用ができていない。

 さらに、ゆくゆくは入居企業間の人材獲得競争が激化するのは避けられそうにもない。

グローバルネットワークを最大限に活用

 苦労を挙げればきりがないこの新天地でビジネスに挑む秘策は、ゴムノイナキが海外に張り巡らせてきたグローバルネットワークの活用だ。

 例えば、将来の幹部候補生と見込んだスタッフは、日本の本社やベトナムのベトナックの工場で研修を受けさせ徹底的に鍛える。

 また、工場の設備や部品の設計図についても、ベトナム工場など実績のある他の拠点が使っているものに準拠させ、そのノウハウを最大限に活用した。

 作業の手順や工程ごとに使うべき工具など、他の拠点で実際に使われている作業標準書の記述をビルマ語に翻訳している。

 今は日本でメンテナンスしている金型も、ゆくゆくはタイ現地法人であるサイアムナックの協力を仰ぎ、タイから調達する考えだ。目指すのは、「グループの生産拠点の中で最も安いモノづくり」だと言う。