ミャンマー語の長さも盲点だった。子供たちが自由闊達に発言する姿を通して新カリキュラムの特徴を伝えよう、という狙いとは裏腹に、授業の冒頭で教師がその日の作業を指示する単純な台詞すら、日本語や英語に比べると長くなりがちだった。
教師の発言シーンを少しでも短くすべく、コンマ1秒単位で編集を繰り返したという。
さらに、授業シーンにリアリティーを出すべく、各教科の専門家の協力も仰ぎ、班作業の時の机の配置から板書の仕方、図形をトレースさせる時のジュースの缶に至るまで細部の演出にもこだわった。
日本のコンテンツ普及の先駆けにも
対外開放が一気に進み、今後、否応なく国際社会で競争にさらされていくミャンマーでは、自ら考え、意見を表明し、時には議論しながら新しい国づくりを担っていける人材の育成があらゆる分野において喫緊の課題になっている。
今回の教育改革が刺戟剤となって、今後、ミャンマー社会に主体性と創造性を持った人材が輩出されるようになってほしい――。
一連の教科書改訂と指導要領の開発作業には、そんな関係者の切なる願いと期待が込められている。
しかし、初等教育は、人の価値観や基盤を形成するうえで特に重要な教育段階であると同時に、その内容や思想は国民性の形成にも直結する。
その意味で、今回の改革において新しいカリキュラムが策定されたのみならず、趣旨を広く伝えるCMやドラマが日本の支援で制作され、全国放送された意義は大きい。
おりしも、現地では今年6月、NHKグループや官民ファンドが出資し、ミャンマーと共同経営するメディア会社「ドリームビジョン」が発足した。