ミャンマー人の担当者と打ち合わせをするヤンゴン編集プロダクションの北角裕樹さん

 長きにわたって軍政が続き、最近まで厳しい言論統制が敷かれて自由なメディアがなかったミャンマー。

 報道が統制され、政府が世論に配慮する必要もなかった当時の影響は、検閲制度の撤廃から5年が経過した今なおこの国に影を落とし、政府は続々と立ち上がる新メディアとの適切な距離感をつかめず衝突を繰り返している。

 そんな不幸な関係を改善し、世論と付き合う術を伝えようというユニークな技術協力が、日緬の看板プロジェクトであるティラワ経済特別区(SEZ)を舞台に行われている。

記者の経験生かした技術指導

 「新聞や雑誌の記者に取材を呼びかけ掲載してもらう記事は、広告記事と比べて事業の信頼度が高まるという効果が期待できる一方で、記者の信念に基づき批判されたり、誤解によって不正確な内容が書かれたりすることもあります」

 「だからこそ、プレスリリースやニュースレター、SNSなどを通じて自分たちの取り組みや目的を記者や関係者らに知ってもらう必要があるのです」

 今年2月、ティラワSEZの管理棟オフィスで開かれたセミナー。

 ティラワSEZ管理委員会や両国の合同会社であるミャンマー・ジャパン・ティラワ・デベロップメント(MJTD)の幹部らに向かってヤンゴン編集プロダクションの北角裕樹さんがこう語りかけた。

 すると、参加者の1人が立ち上がり、「こんな話を聞いたのは初めて。これからは広報について考えていきたいと思います」と興奮気味に話した。

 北角さんは、日本の大手新聞社で12年にわたり記者をしていた際、取材相手の説明力の低さ、特に不測の事態が発生した時のメディア対応の拙さをたびたび感じ、仕事の傍ら週末に大学院に通って危機管理広報を学んだという経歴の持ち主だ。