その意味で、ティラワSEZ管理委員会やMJTDが、過去の経緯と教訓を踏まえ、現在は真摯に地域と向き合いながら開発を進めていることを移転住民や進出企業、投資家、メディアに知らしめ、ティラワブランドを守ることが、かつてないほど重要かつ喫緊に求められているのだ。
それに必要なコミュニケーション力の強化。それこそが、冒頭の協力の狙いである。
ところが、ここで長く続いた軍政時代の影響、「負の遺産」が影を落とす。
当時は選挙が行われず、政府関係者が人々に政策の目的や内容を説明し理解を求める場面もなければ、世論を気遣う必要もなかった。
そのなごりから、民政移管が実現し、その後、政権交代も経験した今もなお、この国では政府関係者の広報に対する理解が低い。
さらに、当時はメディアも日刊紙は国営のみで、検閲制度も敷かれていたため、記者への説明に心を砕く必要もなかった。
2013年に事前検閲が廃止されてメディア環境は一変したが、政府の中には、頭では分かっていても、意識変革が追いつかない者も多い。
最近の状況について、北角さんは「役所の中に広報担当者が配置される動きもありますが、実際には局長など高位の人物が兼任していることが多く、メディアから問い合わせが来ても機能していません」と指摘。
そのうえで、「2013年以降、新しいメディアが次々と立ち上げられていますが、ミャンマー政府が彼らとのつき合い方を正しく理解していないため、無駄な衝突がしばしば起きています」と憂慮する。