今も残る軍政時代の影響
日本とミャンマーが官民を挙げて開発を進めるティラワSEZ。
日本政府は、野っ原だったこの土地を世界の投資家たちの挑戦場に変えるべく、電気や水道、アクセス道路、原材料や製品の輸出入のための港湾施設といったハード面から、投資法の整備、投資の諸手続きを一元的に扱うワンストップサービスセンター(OSSC)の設立に至るまで、全面的に協力してきた。
管理棟に隣接して広がるZone A(先行開発区域)には、2015年9月の開業以来、今年2月までに世界18の国・地域から日系企業45社を含む87社の入居が決定し、うち38社が操業を開始。
整然と並ぶ工場や倉庫に掲げられた各社のロゴが、新市場に挑む不退転の覚悟を示すように陽の光を浴びて輝いている。昨年から始まったZone B(第二期開発区域)の開発と区画販売も順調だ。
ここを舞台に国際協力機構(JICA)の協力で冒頭の広報強化支援が行われている理由は、レピュテーション対策だ。
ティラワSEZは、好調な売れ行きの反面、常に国内外の厳しい眼差しにさらされている。
2012年に日緬が共同開発に合意後、2013年初めにミャンマー政府が「用地は1990年代に取得済み」だと主張。住民に2週間以内の立ち退きを迫って、国際社会から強い非難を招いた経緯があるためだ。
その後、日本側が再三再四、国際基準にのっとって手続きを進めるよう申し入れたことから、結果的には強制移転は回避され、移転地と補償が提供されたうえ、現在はJICAの協力の下で移転住民の生計回復支援も進む。
しかし、この間の世界の動きに目を向けると、2015年には国連で持続可能な開発目標(SDGs)が採択され、環境や社会の問題解決に取り組む企業を評価する動きが加速するなど、事業の成否が組織のレピュテーションに影響を受ける傾向が強まっている。