不測の事態が発生した場合の事実確認や情報分析の方法を教わりながら、広報担当者として自身が担うべき役割の大きさを噛み締めていたのだろう、この日、2人の横顔にもいつもの笑顔が浮かぶことはなかった。

 それでも、怖気づいている様子はない。

 衝突についてどう考えるか北角さんが尋ねると、モモさんは「今回の衝突はたまたまSEZの外で起きたことですが、ティラワ地域の出来事である以上、SEZのイメージ低下につながるリスクがあると思います」としっかりした口調で答えたという。

 「こちらが思っていた以上に状況を俯瞰し、理解できていることに驚きました。法律の素養があるためか、モモさんはSEZ管理委員会としてこれから取り組むべきことについてもきちんと考えています」

 「モモさん自身の問題意識をうまく引き出し、具体的な行動に落とし込むサポートができたら」と北角さんは少しずつ手応えを感じ始めている。

 広報能力を強化することは、組織のレピュテーションを守ることにとどまらず、透明性のある主体的な事業運営を促進することでもある。

 モモさんをはじめ、ティラワSEZ管理委員会自身がその意義を認識し、社会と良好な関係を築くために<自分ごと>として広報に取り組むようになる日を目指し、地道な協力が続く。