今でも戦争中と変わらないニッケル事情
ノリリスクニッケル社はパラジウムで世界のガソリン車を支えるだけでなく、ニッケルと副産物のコバルトによって電気で走る自動車も支えていることになる(もっともニッケル、コバルトではパラジウムほどの圧倒的シェアはない)。またここでも豊かな資源を見せつけてくるわけだ。
それに対し、ニッケル資源が全くない日本は、いかに技術力を磨こうが、いかに高品質の自動車やニッケル酸リチウムを作ろうが、支えられる側である。
戦時中と異なり、ニッケルを含む石ころの精錬は経済性がないので、足りないどころか、一切役に立たない。
そのため、景気の良い話のある反面、業界はニッケルの供給不安要因には敏感である。インドネシアが2014年に行った鉱石禁輸や、2017年のフィリピンの鉱山閉鎖などである。
レアアースが尖閣諸島と絡められ本格的な供給不安に繋がったのに対し、インドネシアのニッケル禁輸では、保護主義的な産業政策以上の政治利用がされなかった。
また、日本の主なニッケル鉱石調達先はフィリピンとニューカレドニアである。本気で困らせられたレアアースと異なり、ニッケルは現在のところ確保できている。そのため、ニッケルの供給確保はレアアースほど目立つ問題ではない。
しかし、ニッケルがなければ、脚光を浴びる電気で走る自動車を作れないことは、ディスプロシウムやネオジムと同じである。
さらにモーターも電池もない伝統的な車すら作れなくなる。一方、日本にニッケルの資源は全くない。地味であるがニッケルの確保は、戦時中と同じく現在でも日本の産業界の生命線なのである。