戦後、ますますニッケルが必要
幸い、戦争は終わった。さらに、戦争中に育った産業基盤は帝国の戦争貫徹には間に合わなかったかもしれないが、戦後、役に立った。
非鉄業界も育ち、日本は世界第3位のニッケル生産国である。ニッケル資源も輸入できているし、海外に権益も持っている。一見すると、ニッケル不足で苦しんだ戦時中の苦労は遠い昔の話であるようだ。
しかし、日本がニッケルを大量に必要とする一方で、資源が全くないという現実は戦時中と何ら変わらないのである。さらに、最近、ニッケルは地味に見えてホットな金属なのである。
ニッケルが機械製造に必須であることは、戦争をしていようがしていまいが変わらない。日本は戦時中と異なり、工業国である。ニッケルがなければ兵器だけでなく自動車も作れない。
単純に日本で製造業が要求するニッケルの量は戦時中よりも多い。戦時中のニッケル生産は純分換算で年間せいぜい数万トン。一方、現在では20万トン近い。
さらに、近年では伝統的な機械製造とは違った新しいニッケル需要が発生している。ハイブリッド自動車、燃料電池車、電気自動車など、モーターを用いる自動車では、電池でニッケルを大量に使用する。
戦争中どころか戦前から存在した機械のためのニッケルとは全く違う使い方である。
ニッケルは産業界のホットトピック
現在、自動車の駆動用電池としてニッケル水素電池とリチウムイオン電池が用いられているが、その双方ともニッケルを使用する。
ニッケル水素電池を使ったパソコンがあまりに早く性能劣化してしまうため、イラついた経験があるのは筆者だけではないだろう。電池が1時間ももたないため、コンセントない場所ではとても使えず、何のためのノートパソコンだか分からない状態だった。
そんな状態なので、ニッケル水素電池はより使いやすいリチウムイオン電池に置き換わりそうだった。
しかし、ニッケル水素電池の劣化を抑える充放電をコントロールする技術が進歩し、ニッケル水素電池はコストパフォーマンスが優れる電池として大変使える電池になっている。
そのため、現行の「プリウス」でもグレードによってニッケル水素電池も用いられている。ニッケル水素電池は将来も使われる現役の電池である。