一方、リチウムイオン電池もニッケルと無関係ではない。正極材として、コバルト系、マンガン系、ニッケル系、この3種類を用いた3元系がある。このうち、ニッケル系と3元系がニッケルを使用する。

 リチウムイオン電池の中では、ニッケル系が最もエネルギー密度が高いが、これまでニッケル酸リチウムを用いるリチウムイオン電池は安定性に劣るとして普及しなかった。

 しかし、安定性克服の目処が立ち、ニッケル酸リチウムを正極材に用いたリチウムイオン電池の自動車での利用が増えそうな状況になった。テスラの電気自動車のバッテリーはニッケル系リチウムイオン電池である。

 電池を積んだ自動車にはHV、PHV、FCV、EVなど様々な方式があるが、どの方式が勝つにせよ電池の総数が増えることは確かである。また、ニッケル水素電池が現役を続けるなか、ニッケル系リチウムイオン電池の拡大が見込まれる。電池用ニッケルの需要は拡大傾向である。

電池用ニッケルは日本が主役

 伝統的なニッケルの用途に加えて、電池材料という新たなニッケルの用途が拡大しつつある。次世代の電池が主流になるまでの間、ニッケルの需要は増えていくだろう。それを受けて、昨年来、ニッケル価格が上昇している。

 日本はそうした動きの主役である。前述のテスラ車の電池に使われているニッケル酸リチウムは、戦争前にニッケル工場を作った住友金属鉱山とその関連会社の連携プレーで製造されている。

 同社のニッケル酸リチウムの生産能力は、2016年10月に月1850トンから3550トンに増強すると発表され、さらにその工事が終わらない2017年7月に月3550トンから4550トンに増強するという。景気が良さそうである。

電池材料・電子材料に用いられるニッケルやコバルトの化合物 緑色のものがあるが、緑色であることがニッケルの化合物らしい。(出所:住友金属鉱山Website)

 また、冒頭のノリリスクニッケルはドイツの化学大手BASFに対しニッケルの供給契約を結んだが、BASFはニッケルを含む電池材料の製造で2015年から日本の戸田工業と提携している。

 こちらも成長傾向で2017年末には米国にも合弁で製造拠点を設けるそうだ。

 日本は伝統的な機械製造でニッケルを必要とするだけでなく、自動車用電池やその電池材料の製造のためにもさらにニッケルを必要とするようになっているのだ。