例えば、銅では昭和40年代まで足尾銅山で採掘していたし、鉛や亜鉛は現在では素粒子の観測の方で有名な神岡鉱山で平成になるまで採掘していた。

 変わり種では北海道にインジウムを産出する豊羽鉱山があった。豊羽鉱山は世界最高品位のインジウム鉱石を持ち、現在採掘されていない理由は資源の枯渇ではなく、地熱対策が大変だからである。

 日本に金属資源が全くないなんてことはなく、あるにはあるが量が少なく現在ではコストに見合わないというのが正しい。一方、ニッケルは本当にないのだ。

 もちろん地質学的にはニッケルを含む石ころは存在するが、資源として経済的に採掘できるレベルのものには程遠い。

 ロシアが豪華過ぎるニッケル資源を持ち、ニッケル資源を粗末にして環境に放出し土壌汚染をしていることは日本から見ればイヤミにしか見えない。

ニッケル確保は大日本帝国の生命線

 戦前、戦争にニッケルが必要なことも、戦争が始まるとニッケルを輸入できなくなることも、日本にニッケル資源がほとんどないことも、大日本帝国はよく分かっていた。開戦前に閣議で議題になったが、それよりはるか前の1930年代から苦肉の策を講じていた。

 例えば、戦争が始まったら回収して兵器生産の原料にするつもりでニッケル製硬貨を発行した。こっそりニッケルを備蓄していたのだ。

 1933年から発行された5銭ニッケル貨と10銭ニッケル貨がそのお隠れニッケル備蓄用硬貨である。しかし、全部でたった1250トンほど。全く足りない。

 戦争が始まってからは大東亜共栄圏内の鉱山を利用した。幸い、現在のインドネシアのセレベス島にニッケル鉱山があり、戦争初期には輸入もされた。

 しかし、戦局が悪化すると、日本の輸送船が次から次へと沈没させられるようになり、日本の勢力圏内とはいえ海外のニッケル鉱石の輸入はできなくなった。

 負け始めると、輸送船が沈められるだけではなく、兵器も消耗が激しくなる。その穴埋めが必要になり、もっとニッケルの需要が増える。