柳澤:2000年から17年が経った今、薬物治療はどのように変わったのでしょうか。

光冨:飛躍的進歩が、大きく二つありました。一つが「分子標的薬」、もう一つが「免疫チェックポイント阻害剤」の登場です。

柳澤:どちらも話題になっている薬物治療ですね。

光冨:そうですね。まず、分子標的薬では、2002年に「イレッサ」が発売されました。当初は副作用として間質性肺炎の問題もありましたが、その後、特定の遺伝子「EGFR」に異常がある患者さんに使用すると非常に効果が高いということが分かりました。現在ではイレッサの他に3種類のお薬が発売されています。

 ちなみに、遺伝子異常については米国の研究で分かったことですが、その後の開発は日本の研究者も大きく貢献しています。

柳澤:肺がん患者さんのうち、どのくらいの割合で遺伝子異常が見つかるのでしょうか。

光冨:遺伝子異常があるのは、ほとんどの場合、腺がんです。日本人の肺腺がん患者さんの約50%にEGFRの遺伝子異常が見つかっています。欧米では約15%しか見つからないというところを考えると、EGFR阻害剤の登場は、特に日本人にとって朗報と言えるでしょう。

柳澤:EGFRの他にも遺伝子異常はあるのでしょうか。

光冨:EGFRに続いて、2007年に見つかったのが「ALK(アルク)遺伝子」です。日本の間野博行医師のグループが発見しました。ALK遺伝子の異常に効果がある薬として「ザーコリ」が登場しました。更に、今年(2017)にはザーコリが「ROS1(ロスワン)遺伝子」の異常に対しても効果がある薬として承認されています。