台所から「やかん」が消える? 家庭にあった原風景

変わるキッチン(第18回)~沸かす

2015.11.27(Fri)澁川 祐子

家庭には「お茶で一息」の原風景があった

「沸かす」道具の変遷を見ていくうちに、1つのことに思い当たった。「沸かす」道具は常にお茶とともにあった。その組み合わせはすなわち、お茶という一息入れる時間の過ごしかたを表しているのではないだろうか。

 電気ジャーポットというと、思い出す光景がある。

 私がまだ小学生になったばかりの頃、すでに75歳を過ぎていた祖母が日がなちゃぶ台の定位置にどっかりと座り、床に直置きしたポットを押してじょぼじょぼと急須に湯を注いでいた。

 当時はきっと、どこの家庭でもよく見られただろう。だが、そんな光景もいつの間にか消えていった気がする。

 ごく一部の上流階級者たちが、その粋を競い合った茶の湯の席に置かれた、趣向を凝らした鑵子。やがて囲炉裏にかけられたやかんや土瓶から、茶の間に居座る電気ジャーポットへ。沸かす道具はいつも人が集い、語らう場にあった。

 だが、最近では核家族化、さらには単身世帯化が進み、近隣との行き来も少なくなってきている。昨今の電気ケトルへの移行は、食卓がどんどん個人化していることの表れだろう。

 個人化が行き着く先に、どんな変化が待ち受けているのか。「沸かす」道具に異変が起きたときこそ、きっとまた食卓の風景が変わるときに違いないと考えている。

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