このところずっと蒸し料理が話題になっている気がする。最初にブームを意識したのは、2003年に『スチームフード』(長尾智子・福田里香著、柴田書店)が出た頃だったか。以来、蒸籠(せいろ)を使ったレシピ集が目につくようになった。
2009年頃には「タジン鍋」が流行った。タジン鍋とはモロッコの伝統的な鍋で、水の貴重な砂漠地帯で食材の水分だけで調理できるものだ。同じ頃、電子レンジで手軽に蒸し料理ができるシリコンスチーマーや、蒸し料理専用のスチームクッカーももてはやされた。
新しい調理器具が登場しては、ちょっとしたブームが起きる。それほど、蒸し料理を手軽においしく作りたいというニーズがあるということだろう。健康志向が叫ばれるようになってから、ヘルシーでおいしいとされている蒸し料理は、常に人々から高い関心を集めている。
しかも秋から冬にかけて、蒸し料理のほかほかとした湯気はなんとも魅力的に映る。そこで今回は「蒸す」をテーマにしようと決めた。なぜここまで、蒸し料理は人々の興味を引くのかという謎を解くために。
「蒸す」と「ふかす」の違いは?
記事を書くにあたり、少し気になったことがあった。「蒸す」と似た言葉に「ふかす」がある。たとえば、さつまいもは「蒸す」というより「ふかす」がぴったりくる。でも実際にやっていることは「蒸す」ではないだろうか。