アジアに向かう日本の若者が増えている。これを口の悪い人は何が悔しいのか、日本で就職できないからだろうと批判する。確かに日本に魅力的な就職先が少なくなってきたことは事実だろうが、彼らを「日本から逃げ出している」ととらえるのは間違いだ。
アジアは日本人の若者を求めている
急速な経済成長を遂げてきたアジアの国々、とりわけ東南アジアの国々では、日本とつながることが継続的な成長に不可欠と考えている。
日本には大きな市場があり優れた技術がある。それだけではない。日本とのつながりを重視するアジアの国々は、日本の文化にも強い関心を示している。
アジアに向かう若者たちは、そうしたアジアと日本を結ぶ架け橋になり始めている。アジアの国々が日本の若者たちを求めていると言ってもいいだろう。
2008年5月にベトナムで人材紹介会社アイコニック(iconic)を立ち上げた安倉宏明さんは、アジアの企業が日本人の若者たちを雇いたがっていると言う。
「まだ私が人材紹介会社を起こす前、ベトナムにある知り合いのIT企業で営業に回っていたときでした。営業の話とは別に何人ものベトナム人経営者が日本人を雇いたいので力を貸してくれないかと言うんですよ」
その理由を聞くと、日本人は非常に能力が高いからだという。ベトナム人に比べ高い賃金を払ってもぜひ雇いたいというのだ。
日本人の能力という中には、高いスキルは当然含まれるが、チームワーク力や他人を思いやる気持ちなども含まれる。
日本人にとっては当たり前のことも海外では簡単に得られない。戦後の日本が急速な復興を果たせたのも、日本人一人ひとりの高い能力があったおかげである。その力をアジアの企業は借りたがっているのである。
安倉さんは、ベトナム人経営者から相次いでそのような依頼を受けて、アジアに優れた日本人の人材を紹介する必要性を痛感した。