参政党の支持者を巻き込むSNS運用

山口:石丸氏のSNSの使い方の特徴は力強さを強調することです。

 安芸高田市長時代に石丸氏が居眠りをした議員に対して放った有名な言葉に「恥を知れ!恥を!」がありますが、石丸氏はあの言葉を放つタイミングを3日前から見計らっていたと後に自ら書いています。強い言葉はSNSで非常にバズりやすく拡散されやすいことをよく知っているのです。

 そして、石丸氏の選挙期間中の街頭演説も特徴的でした。次々と移動しながら短い街頭演説をさまざまな場所でするのです。スマホをかざして演説を録画する人が多かったのが石丸氏の街頭演説の特徴で、熱心な支持者、目立ちたい人、石丸氏のコンテンツで稼ぎたいインフルエンサーなどさまざまな目的を持った人が集まりました。

 普通、選挙の候補者は1カ所でじっくりいろいろなテーマに関して時間をかけて演説したいと考えるものですが、それだと動画配信では長すぎる。そこで石丸氏は1カ所で15分ほど演説をして次の場所に移るのです。

 こうすると演説の背景や内容が変わるので、配信する側がとても配信しやすい。また、石丸氏は自分で配信する動画を「切り抜きOK」にしました。その結果、多くの人が率先して切り抜き動画を作りました。

 参政党もまた自分たちの動画の切り抜きを許可している政党ですが、興味深かったのは、参政党の神谷代表がSNSの使い方を画像にまとめて支持者向けに配信したことです。

 参政党の支持者がネットでおかしな情報や間違った情報を発信して炎上すると、党のイメージにも影響を与えます。支持者は参政党を応援したり、ライバルを批判したりする情報を発信する場合がありますが、その際にやっていいことといけないことをまとめたマナーを動画で解説したのです。このように支持者を巻き込んで一体化していくSNS運用がとても印象的でした。

──強い言葉はバズりやすい、ということですが、X(旧ツイッター)やYouTubeを見ていると、異様なまでに怒っている人の映像がよく見られます。

山口:そうですね。SNSでは、怒りの感情が非常に拡散されやすいことが研究から明らかになっています。さまざまな感情を表現する投稿の中で、怒りの感情が最も拡散されやすいのです。加えて、センセーショナルな情報も拡散されやすいことが分かっています。

 地味な政策の議論よりも、センセーショナルでショッキングな情報のほうが見られる。閲覧数を稼ぐために、どんどん派手で過激な表現や短絡的で分かりやすい情報ばかりが投稿されて拡散されているということです。

 また、SNSのアルゴリズムも人気のあるコンテンツやその人の好むコンテンツをタイムラインの上位に表示します。こうなると、アルゴリズムと人の特性が合致して、過激で短絡的なコンテンツばかりが拡散されるようになります。その結果、そうしたコンテンツを投稿する人も増えるのです。

 ただ、政治に関していえば、私たちに返ってくるのは現実の政策です。SNSで人の目を引きやすいテーマばかりが注目されることが健全と言えるかは大いに疑問です。