外国人政策を重んじた人はほとんどいなかった
──たしかに目を引くテーマが優先されがちになりますね。
山口:2025年の参院選では、参政党が外国人政策をテーマにして選挙戦を戦いました。それがネット上で盛り上がり、それを見て他の政党も街頭演説や政策に反映していこうと、それぞれの立場から「外国人」や「外国人政策」に関して意見を述べ始めました。
それを見たマスメディアが、「外国人」に関する話題が選挙で盛り上がっていると判断して取り上げ、そうした大手メディアの報道を見てさらにネットが盛り上がる。このような拡散の循環の中で「外国人」というテーマへの注目がみるみる膨れ上がりました。まさにSNSが選挙のアジェンダ設定をしたのです。
ところが、この話には後日談があります。読売新聞の出口調査によると、この参院選で有権者が最も重視した争点は物価高対策・経済政策でした。およそ半分の人が経済政策を重視して投票したと回答し、外国人政策を重んじた人はわずか一桁パーセンテージしかいませんでした。
これは「外国人」というテーマが持つ特性にもよります。外国人政策は感情的になりやすい政治テーマで、この話題に熱心な人がSNSで激しい投稿を重ねがちです。でも、実際には多くの有権者にとってはそこまで重要なテーマとしては響きませんでした。ですから、選挙のアジェンダを設定したことは事実ですが、社会の意見分布と完全に一致したわけでもなかったのです。
山口 真一(やまぐち・しんいち)
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター教授
1986年東京生まれ。博士(経済学・慶應義塾大学)。専門は計量経済学、社会情報学、情報経済論。NHKや日本経済新聞をはじめとして、メディアにも多数出演・掲載。KDDI Foundation Award貢献賞、組織学会高宮賞、情報通信学会論文賞(2回)、社会情報学会論文奨励賞、電気通信普及財団賞、Web人賞、紀伊國屋じんぶん大賞、Nextcom論文賞を受賞。主な著作に『スマホを持たせる前に親子で読む本』(時事通信)、『ソーシャルメディア解体全書』(勁草書房)、『正義を振りかざす「極端な人」の正体』(光文社)、『炎上とクチコミの経済学』(朝日新聞出版)などがある。他に、早稲田大学ビジネススクール兼任講師、慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート共同研究員、シエンプレ株式会社顧問、東京都デジタル広報フェロー、日本リスクコミュニケーション協会理事、日本テレビ放送番組審議会委員などを務める。また、内閣府「AI戦略会議」を始めとし、総務省、厚生労働省、文部科学省、公正取引委員会などのさまざまな政府有識者会議の委員を務める。
長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。