反則金を返せば済む問題ではない
――たしかに、芳井さんの件は2025年の1月ですから、今回発表された2700件の中には入っていません。ということは、まだまだ不正摘発の被害者はいるということです。これは反則金を返せばよいという問題ではありません。免停や取り消しになった人、ゴールド免許から脱落して自動車保険料が上がってしまった人、運転手の仕事を失った人……、計り知れないほどの損害が出ているはずです。
芳井 大変だと思いますよ。
――芳井さんだからここまでできましたが、何も知らないドライバーは、捕まったらそのまま罰金や反則金を納めているんでしょうね。最近では車の前後にドライブレコーダーをつける人も多くなってきたので、おかしいと思ったらそういう証拠を突きつけて声を上げることが大切ですね。それにしても、警察がいまだにこんなことをやっているなんて……。
芳井 『取り締まりしやすい場所で、取り締まりしやすい相手に、取り締まりしやすい証拠を作って点数をあげる』。これは、昭和42年の警察庁次長通達で全国の警察に対し指示している内容とは真逆です。
(参考)警察庁依命通達(昭42・8・1 警察庁乙交 警察庁次長)
長年の効率重視の取り締まりのやり方が伝統となって、感覚が麻痺しているんだと思いますが、不正検挙は神奈川県警だけの問題じゃありません。
実際に私は東京都内でも何度か違法な取り締まりを経験しています。警察組織では、たくさん取り締まるとよくやったと評価が上がる。ですが不正な取り締まりで点数を稼いで、本当に必要な危険防止のための取り締まりや活動がおろそかになるなら本末転倒。現在神奈川県警の交通機動隊の職員は、苦情の対応にてんてこ舞い、本来の職務ができない始末です。
――思わずため息が出ますが、これは犯罪なのでしっかり捜査してもらいたいものです。そして私たちも、おかしいと思ったらとにかく声を上げることが大事ですね。
芳井 17年前に出版した『切らせない!交通違反キップ』という本の表紙に「そんなアナタがカモなんです!」というセリフ付きのイラストを描きました。
――カモにはなりたくないです……。
芳井 そうですよね。カモにならないためには声を上げるしかありません。市民が黙っていたら、彼らは増長し、暴走するだけです。警察の職務を監視するのが市民の役目でもありますね。
――楠警察庁長官は会見で、「交通の安全を確保する上で、危険性の高い違反行為に重点を置いて取り締まりを行う必要がある。その前提として、取り締まり自体が適正に行われなければならない」と述べたそうです。
芳井 長官には、こちらの資料をよく読んでいただきたいですね。そして皆さんには、神奈川県警の2700件不正検挙問題や、それに類する他府県の事例について国民としての意見や要望があれば、ぜひ警察庁にドシドシ申し入れをしていただきたい。こういう権力組織は、国民が声をあげなければ変わりません。
――ありがとうございました。
<資料/芳井さんが県警に送った改善要求>
●神奈川県警第二交通機動隊・Y巡査の職務に、重大な法令違反があった件について下記の通り告発し、改善要求するものである。
芳井さんが神奈川県警第二交通機動隊の巡査に切られた青切符(画像は一部加工しています)
Y巡査の執行した当該取締り(ママ。以下同)は適正な法的手続きに基づく反則告知とは到底言えないため、速やかに『交通反則告知是正通知書』による撤回手続きを執るように強く求める。
****
Y巡査は、令和7年1月20日13時頃、小田原厚木道路下り車線を走行する当方運転の普通乗用車に停止を求めた。止めた理由は速度違反があったとのことであるが、その内容に疑義があるため柳田巡査に詳細の供述を求めた。その結果、以下のような事実が判明した。
① Y巡査は、小田原東ICで小田原厚木道路下り車線に合流し、その付近で当方車両を発見した。
② 速度超過の疑いがあるため、乗車中のパトカーを加速させたが、制限速度を超えた地点で赤色灯をつけていなかった。
③ 酒匂川手前までの区間100mの等間隔等速度の計測追尾を行って計測を終了し、ここで停止の指示のために赤色灯をつけた。
④ 『①追尾開始地点』から『③計測終了地点』まで450mであり取締りに要した距離は極めて短い。
よって当該取締りを以下のように評価する。
●取締り自体が違法である。
●取締りに要した距離・時間ともに拙速かつ不十分で、100mという計測距離自体も不確かで不十分、証拠能力に欠ける。
●悪質性・危険性・迷惑性のない軽微な違反については警告指導を旨とし、取締りのための取締りを行なうことはあってはならないとする警察庁の通達に反している。
●その他、法的手続きにおいても違法な職務の執行があった。
交通指導取締りの規範を示すべき交通機動隊職員が、このような職務を執行することは、善良な市民として看過はできない。
また、当該取締りは適正な法的手続きに基づく反則告知とは到底言えないため、速やかに『交通反則告知是正通知書』による撤回手続きを執るように強く求める。
警察法第79条に基づき、神奈川県公安委員会への苦情申出をするべき事案であるが、当該巡査と指揮命令をとる直属上司、交通機動隊責任者に弁明の機会を与える。また県警交通部責任者においては、当該事案に対する見解と再発防止策についての返答を強く要求する。





